第十五話 狂乱の始まり
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メートル先すら全く見えない。
「とにかく、戻らなきゃ……ッ!?」
突然、体中に悪寒が走った。
誰かに見られている。
ねっとりとした、粘着質で纏わりつくような視線だ。
私は、腰に差してあるレイピアを構えると、辺りを見回す。
すると、霧の向こうから誰かが此方に向けて歩いてくるのが見えた。
きっと先程からのこの視線の正体であろう。
私は警戒しながら、その人影を睨みつける。
近づくにつれて、ようやくその人物を見て取れた。
「こんばんは、お美しいお嬢さん」
全身が泡立つ感覚がした。
視線の先にいるのは奇妙な男だった。
奇抜な黒いローブを着た優男、肌の色は不健康に白く、両の目が飛び出すかと思うように見開かれてギョロギョロと動いている。
男の言葉で、私は今までにないくらいの気持ちの悪い感覚が全身に走った。
一目見て、まっとうな人間ではない、明らかにサーヴァントだ。
「こんな夜更けに、女性の一人歩きは危険ですよ」
男はそう言うと、私に近づき手を伸ばす。
私に何をしようというのか、何故私に近づいたのかは分からない。
おそらくサーヴァント絡みだと思うが、アーチャーは今側にいない。
私は震える体を精一杯振り絞って、男の手を払いのけた。
手と手の当たる乾いた音が辺りに響き渡る。
私は男と一旦距離を取ると、レイピアを構えいつでも戦える準備を整えた。
男はびっくりしたような顔をすると、茫然と私の顔を見つめている。
「嫌われてしまいましたか……。本当は少しの間眠ってもらおうと思っていたのですが、仕方ありません」
男はそう言うと、懐から1冊の本を取りだした。
何とも形容しがたいデザインをしている。
あまりにも禍々しくて、不気味な雰囲気だ。
見ているだけで気分が悪くなってくる。
「力づくと言うのはあまり趣味ではありませんが、仕方がありません」
男はそう言うと本を開き、手をページの上に翳した。
その瞬間、何やら蠢くような音が聞こえてくる。
男から注意を逸らさないように辺りを見回す。
蠢くような音は私と男の周りを囲うようにして聞こえてくる。
その音の正体は、何体ものモンスターだった。
いや、モンスターと表現していいのだろうか。
触手はずるずると地面から抜け出すように現われ、やがてその異形が全ての姿を私の目の前に現す。
「ヒッ……!?」
そこには、形容しがたい“何か”が居た。
蛸を逆さにしたような、あるいはヒトデのようなグロテスクな姿、触手の中心にある口の部分には鋭い牙が乱立している。
吐き気をもよおすほどにグロテスクな姿は、私を一歩下がらせる。
怖気しか感じないような異形がそこにいた。
「安心してください、
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