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銀河英雄伝説〜その海賊は銀河を駆け抜ける
第三十七話 護衛任務
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なかっただろう?」

うーん、確かにそうだけど……。
「そんな事を言ったら馬鹿だと思われるからね」
少佐がニヤニヤして僕を見ている。お前は馬鹿か利口か、どっちだって聞かれている気がした。この人、結構人が悪そうだ。

「それだけに反乱軍としてはどうしても輸送部隊を叩きたかった筈だ。上手く行けば帝国軍は補給切れで戦わずして撤退という事も有り得た……」
「なるほど……。反乱軍は一個艦隊でしたけど増援とか有ったんですか? 頭領は増援が有るって言ってましたけど」
僕の質問にクリンスマン少佐はゆっくりと頷いた。

「多分、有っただろうね。ヤン・ウェンリー提督は名将だ、一個艦隊で六個艦隊に戦いを挑む程愚かじゃない。それなのに我々の後ろを暫く追ってきたのは味方が居たからだろう。こっちが攻めかかれば上手く混戦に持ち込んで輸送部隊を叩こうとしたんだと思うね。あの後ろに増援部隊が居たか、或いは我々の前方、側面に居たか……」

クリンスマン少佐が“怖いよな”ってボソッと言った。同感、本当に油断も隙もない。
「頭領が平文で総司令部に電文を打っただろう?」
「はい」
「あれは反乱軍に聞かせるためだ。お前達が何を考えているかは分かっている。その誘いには乗らない、無駄だから引き揚げろ、頭領はそう言ったのさ。だから暗号を使わず平文なんだ」

「はあ」
凄いや、そんな駆け引きが有ったなんて……。全然分からなかった。
「それが分かったから反乱軍は通信の後、直ぐ撤退した。帝国軍が挑発に乗る事は無い、もしかするとウルヴァシーから増援が出るかもしれない……。どちらにしろ輸送部隊を叩くことが出来ない事は分かったからね」

「凄いんですね、そんな駆け引きが有ったなんて……。僕、全然分かりませんでした」
本当に凄い、僕なんかただ興奮していただけなのに……。
「頭領が軍事においてかなりの才能を持っている事は皆が分かっていた。ただ実戦指揮官としては如何なのかという疑問を多くの人が持っていたはずだ。しかし今回の対応を見ると実戦指揮官としてもかなりの物だろう。メルカッツ参謀長も殆ど口を出さなかった。あとは実際に戦闘になってからの対応だろうね」

「戦闘……。この艦隊、戦闘に出るんでしょうか。それって帝国軍が負けそうな時ですけど」
本当に負けそうなのかな? 補給がウルヴァシーに届けば一年は戦えるんだけど……。

僕の言葉にクリンスマン少佐が“うーん”と唸り声をあげた。
「さあ、如何かな。帝国軍が有利に見えるのは確かだ。補給が届けばさらに優位は高まる。ただ頭領は我々とはちょっと見る所が違うからね。もしかすると我々には見えない何かが見えているのかもしれない。だとすると……」
「だとすると?」
少佐が僕の顔を見てニヤッと笑った。
「出るかもしれないね」


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