暁 〜小説投稿サイト〜
Monster Hunter ―残影の竜騎士―
第二章 Alea jacta est ―災厄の乙女―
1 「東雲の風」
[5/7]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
気そうで、なによりです。もうそろそろ50なのに、まだまだお若いですねって痛ッ」
「女性の年齢は口に出すものではありませんよ、凪さん」
「…ハイ。スミマセンデシタ」

 ビシッとデコピンをキメた真砂は、変わらぬ聖母のような微笑を浮かべたまま小首をかしげた。凪の記憶が正しければ今年47か、48か、それくらいだったと思うが、どう見ても30代前半の女性にしか見えない。詐欺だ。

「あなたはいくつになりましたか?」
「今年で23になります」
「そう……。大人に、なったのね。元気そうに暮らしているようで、何よりだわ」
「……真砂さん」
「聞きたいことは分かってる。雪路の髪でしょう? 名前のとおり、あんなに真っ白になって……」
「何があったんです? 少なくとも10年前は……俺が、楽団を抜けた時はまだ黒髪だったはずだ」
「ええ。あの子の髪がああも真っ白になったのは、つい最近のことなの。といっても、もう半年は経つわ。このユクモ村に来たのも、病に効く鉱泉があると聞いたからでね。まさか、貴方とまた会えるだなんて思ってもいなかったけれど……。生きているうちに会えて、本当によかった」

 切なげに微笑み目尻を拭う真砂に、凪は畳み掛けるように問いかけた。

「どういうことです? 雪路は、病に? 菖蒲兄はどうしたんですか」
「……」
「真砂さん!」
「……いわゆる、不治の病、というやつでね。特効薬が、無いのよ……。病気の進行を遅らせる薬はあるのだけど、材料が高価で、竜の素材も必要になって。でも素材なんて金で買おうとしたら一体いくらになるか。それで汀と岬は、ハンターになったの。貴方の父君に鍛えてもらって。ああ見えて実はHR2の招来有望なハンターなのよ。もともと運動神経が良かったのでしょうね」
「なっ!」

 あの双子はまだ14歳だ。岬の方はまだ声変わりもしていないし、若干丸みを帯びて女性らしくなりつつあるリーゼやエリザと違って、汀など絶壁もいいところだ。明らかに子供の2人が、常に危険と隣り合わせになるハンターとなることを何故父が、よりによってその双子の父親が許可したのか。

(みなと)さんもね、もうすぐ50歳。だんだん体がきつくなってきたって、前から言っていたの。この間も、楽団を守るために大怪我を負って……左目を、失ったわ」
「父…さん、が……?」

 天満港。
 凪にとって絶対的な存在――“父”であり、誰よりも凪を疎んだ、東雲楽団の護衛ハンター。世界的に見ても数は少ない“上位”に到達した優秀なハンターである彼が操る(ランス)は流れるように敵を穿ち、常に強者で有り続けた。父よりも強い者などいないとさえ思った時期もある。

「……貴方は、強くなったわね」
「……」

 次から次へと知らされる捨てた過去の続きを、凪は眉
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ