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神々の黄昏
第三幕その三
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第三幕その三

「だから指輪を」
「それを」
「私の剣はあらゆるものを断ち切る」
 だがジークフリートはその河の中の彼女達に告げるのだった。
「どんな呪いであってもノルンの糸も」
「運命もまた」
「断ち切るというのね」
「その剣で」
「そうだ」
 まさしくその通りだというのである。
「このノートゥングでだ」
「その剣で」
「全てを」
「かつてあの大蛇も私にそのことを告げた」 
 そのことを忘れたことはなかった。彼にしてもだ。
「この指輪を手に入れれば世界も手に入れられるという」
「それも知っているのなら」
「どうしてまだ」
「手放さないというの?」
「恋の喜びさえあればいい」
 それこそがジークフリートの望むものであるのだ。
「私は貴女達にこれを返してもよかった」
「それなら是非すぐに」
「今その指輪を」
「私達に」
「私は脅しは嫌いだ」
 これはジークフリートの心だった。彼はそれを嫌っているのである。
「そんなことを言うのなら私は返しはしない」
「愚かなこと」
「それで貴方も」
「破滅するというのね」
 乙女達はここで遂に彼を諦めた。
「わかっているようでわかっていない」
「何もかも」
「誓いさえも」
「誓い?馬鹿な」
 ジークフリートはその言葉には眉を顰めさせた。
「私は誓いは破らない」
「誓いをしながらそれを守らない」
「神秘の文字を知りながら解こうとしない」
「何もわかってはいない」
 こう言っていく乙女達だった。
「いと高き宝を持ちながら」
「それを捨てたのに気付かない」
「呪いは真実だというのに」
 そしてさらに言ってきた。
「さようならジークフリート」
「今日のうちにも全てが終わる」
「貴方だけでなく」
「私ではなく」
 ジークフリートにはさらにわからないことだった。
「誰が滅ぶというのか」
「彼女がその指輪を受け継ぎ」
「そして私達のところに」
「いよいよ」
 こう言っていくのだった。そうして。
「ヴァイアラーーラーーーー」
「ヴァイアラーーラーーーー」
「ライアーーーー」
 またその声をあげて河の底に消えていく。そうしてだった。
 ジークフリートは一人になった。そのうえで河から顔を離して言うのだった。
「水の中でも陸の上でも女達は同じなのか」
 あのブリュンヒルテのことも同時に考えるのだった。
「お世辞を信じない時は脅し文句を並べ反抗すると罵られる」
 彼女達とブリュンヒルテについて同時に考えて続けていた。
「しかし」
 だがここで別の女のことも考えて呟く。
「グートルーネは。彼女は裏切れない」
 こう言うのだった。そうしてその場を去ろうとする。ここでハーゲンの声が遠くから聞こえてきたのである。

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