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少女1人>リリカルマジカル
第三十一話 少年期M
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う声が耳に入り、恐る恐る俺は瞼を開いた。すると、いつも見ていた目線とは違う風景が目に映る。だけど、どこかデジャビュを感じる。なんだか懐かしいという感覚。

 ……そうだ、昔はずっとこの目線だった。大学生になって成長がストップしてからは何年もこの高さで過ごしてきたんだ。誰かと話す時も、放浪するときもいつもこの高さから見ていたんだから。今その時の景色が見えるということは、それはつまり。

「はは、飛んでる」

 少し震えてしまっていた手は、俺が認識したと同時に止まる。視線を下に向けてみると地面が足元より下に見えた。地に足がつかない感覚を今更ながら実感する。ちょっと落ち着かない気持ちもあるが、高揚する気分の方が強く、そこまで気にならない。

 これが魔法なのか。言葉にすればたかが数cm程度、空に浮かび上がっただけのこと。だけど、俺には今の気持ちを言葉にできないぐらい感動していた。もともと魔法なんて物語の中だけのものだと思っていたんだ。それが現実として手が届きそうになって、そして掴んだ。


「……すげぇ。――トッ!?」
『ますたー、目的忘れてません? 飛んでいる感覚に慣れるんでしょう。ほら、空中でしっかり立てるようにファイト!』

 ちょっと動いたら身体がくるりとひっくり返った。負けるものか、と必死に身体を支えようとしては、すぐに横転する。何回も挑戦してようやくコツらしきものがつかめてきて、ついに真っ直ぐに浮かぶことができた時は思わずガッツポーズをしてしまった。

 それから少しの間低空だが、散歩を楽しむ。冬の涼しい風が身体全体に滑るように当たる。それが素直に気持ちいいと思えた。なのはさんが空を飛ぶことが好きだ、と言っていた理由が今ならよくわかる。こんなちょっとしか飛んでいない俺でさえも、楽しくて仕方がないのだ。もっと大空を飛んでみたいと思ってしまうぐらいに。

『ますたー、そろそろ降りましょうか。長時間魔法を使いすぎるのは危険です』
「おう、そうだな。それと本当にありがとな、コーラル。飛べて嬉しかった」
『ますたーが頑張ったからですよ。でも、感謝の言葉は受け取っておきます』

 そうして地面に足がつくと、途端にバランスを崩し、俺は芝生に尻餅をついてしまった。揺れる視界に驚いたが、徐々に収まっていき、それからちゃんと地に足を付けて立つことができた。俺はパチンッ、と頬を手でたたき、喝を入れる。

 さぁ待ってろよ、無重力! お前を克服して、俺は目的を完遂して見せるぜ!



******



「ふはははは! 立った! 俺は立った!!」
『はいはい。ところでここからどうやって調べるのですか? どこを見回しても本だらけ。この中から目的の本を見つけるのは大変ですよ』
「そういえばそうか。えっと確か……そ
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