第参話 《第一層ボス攻略戦》〜中編〜
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も、貴方だったら強制覚醒だってできるでしょう?」
その言葉を聞き、男はしばらく唖然とした表情だったが、その内に口の端を小さく歪めた。
「確かに私と、そして彼がいれば、それは出来るだろう。だが、そうはいかない。強制覚醒をしてしまえば、私が真に見てみたいものが見れなくなってしまう。……私の些細なこだわりだがね」
軽く肩を竦めて、男は立ち上がる。
「何処へ行くの?」
「少し、ゲームを盛り上げる為の下準備にね」
そう言い残し、男は白衣を翻して部屋に唯一ある木製の扉(勿論これも白一色)を押し開け、外へと踏み出した。
「あ、ちょっと!」
呼び止めようとしたが、もう男は扉を閉め終わったところで、少女の呼びかけは無駄に終わった。
「ああ、もう。もう少しで私が勝ったのに」
○●◎
「……行くぞ、みんな」
ボス部屋の前の大扉でディアベルが立ち止まり、振り向いて銀色の光を放つ長剣を高々と掲げる。大きく頷いて、皆を見回す。
四十七人のプレイヤー達も同じように自身の得物を抜き、天へと掲げる。
ディアベルは青い頭髪をなびかせて扉に向き直り、扉の中央へと置いて、
「――――勝つぞ!」
短く叫んで、思い切り扉を開いた。
第一層のボス部屋は奥へと延びる長方形型の空間だった。左右の幅はおよそ二十メートル、奥までは百メートル程度だろう。
「(意外と広いな……)」
シキがそんな感想を抱いた直後、暗闇に沈む部屋の左右の壁から吹き出た暗いオレンジ色の炎が粗雑な松明を燃やす。
炎は段々と奥へ走っていき、最後の松明に火が灯った数瞬後に内部のしっかりした構造が確認できた。
ひび割れた石床や壁。その各所をおどろおどろしく彩るのは大小様々のドクロ。そして部屋の最奥には、粗雑ながら巨大な玉座に座する何者かのシルエット。
リーダーである青髪の騎士は高く振り上げたままの銀の刃を、さっと振り下ろした。
それを合図に四十八にも及ぶプレイヤーの群れは大音量の鬨の声を発しながら大部屋へと雪崩込んだ。
コボルドの王、イルファング・ザ・コボルドロードは多数の侵入者を確認してか、鋭い乱杭歯が並ぶ顎を開いて天高く咆哮を挙げた。
かくして、四十八人のパーティーとコボルドの王とその親衛隊の戦いが始まった。
○●◎
「スイッチ!」
その鋭い声に身を弾かせ、後方にステップで下がる。
それと入れ違いにキリトが《ルインコボルド・センチネル》とシキの間に割って入る。
キリトは直ぐ様片手剣用ソードスキル《ホリゾンタル》を発動させ、全身を固められた装甲の隙間である首元を深く切り裂いた。
「ナイス」
「そっちこそ」
互いを称賛し合った後、更に隣のセンチネルを切りつける。
ベータテスト時、センチネルの数は三体
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