第参話 《第一層ボス攻略戦》〜中編〜
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い。人の名前くらい覚えようぜ?」
「失礼。人の名前を覚えるのは苦手でね」
キバオウに見せたものとは正反対の歓迎の微笑みを浮かべるシキ。
しかし、と前置きしてエギルは疑問の声を発する。
「何故君はあそこまで彼を嫌悪する? 確かに彼はベータテスターを憎悪しているようだが……君がベータテスターなわけではないのだろう?」
「……そうだな。単純に、ああいう誰かに差別的な目を向ける奴が嫌いなだけだと思う」
根も葉もないことを苦笑いと共に吐き出して、追求を逃れたい思いを抱き空を仰いだ。
それを察したのか、エギルはそれ以上追求せずに、
「俺達が前線を支えてやる。その代わりに雑魚どもの始末は任せるぜ」
にかっと笑って仲間のB隊の元に戻っていった。
しばし、沈黙。
「みんな、いきなりだけど――ありがとう! たった今、全パーティー四十八人が、一人も欠けずに集まった!!」
おおおっ、と周りのプレイヤー達が歓声を発する。
ディアベルはぐるりと周りのプレイヤーを見回し、満足げに頷いて右拳を天へと向けた。
「今だから言うけど、オレ、一人でも欠けたら今日は作戦を中止しようって、そう思ってた。けど……そんな心配、みんなへの侮辱だったな! オレ、すっげー嬉しいよ。こんな、最高のレイドが組めて……」
笑う者や口笛を吹く者がいれば、同じように右手を突き上げる者もいる。
ディアベルは両手を広げて喚き声を鎮めて、
「みんな……もうオレから言えることはたった一つだ!」
青髪の騎士は剣を引き抜き天に向け、言った。
「……勝とうぜ!!」
ディアベルの声に応じる鬨の声は、洪水のように耳を震わせた。
○●◎
所変わって白い部屋。
「ねぇ」
いつものようにチェスを差している二人の内、青髪の少女が言う。
「何かな?」
「いえね、気になっただけなのだれど」
言いながら、男の黒い兵士を自軍の白い兵士で倒す。
「彼、完全な覚醒には至ってないんじゃない?」
そうだな、と男は頷く。
「まぁ、仕方ないとは思うがね。私にとっても彼の覚醒は予想外な程早い」
だが、と歯切れの悪い台詞を残す。
「だが、なに?」
「……いや、気にしないでくれ。王手」
思案する素振りも見せず的確に駒を動かしているあたり、こいつは脳が二つあるのではないかとすら思う。
「……それで、他の覚醒の兆しは?」
「無い」
男は駒の動かしながら断言した。
「本当に?」
「私を疑うかい? まぁ、無いものはないで変わらないのだけれど」
素っ気なく言って、男は椅子を軋ませる。
「焦ったところで意味などない。私が君に言えることはそれぐらいかな」
「……そうだけど」
小さく項垂れて、少女はよく解らないとでも言いたげな表情で顔を起こす。
「で
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