第参話 《第一層ボス攻略戦》〜中編〜
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「チルノは?」
「まだ見ていない。大方、まだ眠っているんじゃないか?」
ウインドウに本を格納し、椅子から腰を浮かす。
軽く背伸びして、シンは一言だけ、
「さて……今日は頼むぞ? リーダー」
「善処するさ」
そんな皮肉にシキは苦笑で答える。
ただの娯楽に過ぎなかったはずの世界は、死を孕んだ世界へと変貌した。そして今日初めて、大多数のプレイヤーが組み、第一層ボス――《イルファング・ザ・コボルドロード》との死闘が始まろうとしている。
○●◎
集合時間の五分ほど前に集合場所へと行くと、既に他の三人は来ていた
「よう。全員集まってるみたいだな」
軽く手を上げて挨拶を寄越すキリトと小さくお辞儀するアティ、そして何の反応も示さないアスナ。
「…………」
アスナのその態度がシキに一年ほど前の自分を想起させたが、即座にそれを頭から追い出す。
「んじゃ、決意表明よろしくな。リーダーさん」
「おいてめぇ、これ以上俺に面倒事押し付けるなよ」
そんなキリトの無茶振りに笑い混じりの声で返す。
「決意表明じゃないが、簡単な指示を出す。今回の大規模戦闘での俺達F隊の役割はE隊と周りの《ルインコボルド・センチネル》の殲滅が目的になる」
「そんなのいつ決まったんだ?」
キリトの至極最もな問いに「ついさっきだ」と答える。
「因みにE隊はキバオウが指揮しているが――まぁそれは今どうでもいいな。とにかく、センチネルの殲滅が俺達の仕事だ。仲間が頼れない場合は個人の判断で何とかしろ。最後に、敵を倒すことよりも生きることを優先しろ。絶対に死ぬな」
以上だ、と締めくくるとほぼ同時に後ろから聞こえた「おい」というおよそ友好的でない声に、シキは振り返る。
そこにはやはりと言うべきか、キバオウがいた。
「何だ? キバオウ」
「何だ、やないわ。朝イチのリーダー会議でも言ったけどな。ジブンらは後ろに引っ込んでどいて――――」
「嫌だね」
至って無表情、そして無感情な声で返答する。
「アンタらの後ろに引っ込んでるなんて死んでもゴメンだ。それに、アンタらはどうせ経験値を奪っていく俺達を邪魔ににしか思ってないんだろうけど、それで死んだらとんだ笑い者だ。――まぁ、そうなりたいんだったら話は別だけどな」
最後に不気味な笑顔を見せつけると、キバオウは怒りの形相で、しかし自制して地面に苛つきを叩きつけるようにどしどしと歩いてE隊の元へと戻っていった。
「ハ――、いい気味ね」
「レディがそんなはしたない言葉を使うものではないぞ」
チルノは不愉快極まりないといった調子だったが、それを諌める渋いバリトンが流れた。
再びの背後から声にシキは振り向いた。
「エギル…………だったっけ?」
シキの向く先には、茶色肌の巨漢が佇んでいた。
「おいお
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