暁 〜小説投稿サイト〜
剣の丘に花は咲く 
第八章 望郷の小夜曲
第六話 変わらないもの
[12/17]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
引かさせた。

「シロウ。知り合いですか?」
「ああ。以前一度会ったことがある。トリステイン銃士隊隊長のアニエスさんだ」
「ほう。隊長ですか」
「誰だこいつは」

 セイバーの問いに士郎が答える。セイバーは顎に手を当てアニエスの身体を頭から足先まで一瞥すると、感心したように頷く。じろじろと遠慮のない視線に晒されたアニエスは、先程まで剣を突きつけられていたことからも、険しい眼付きでセイバーをギロリと睨む。

「あ、ああ。えっと彼女はだな……その……だな。何と言うか」
「アニエスでしたか。私の名前はアルトリア・ペンドラゴンと言います。一月程前彼が倒れているのを森の中で偶然発見し、保護していた者です」
「ふん……保護か……それにしては先程は随分と殺意に溢れていたように見えたが」

 疑いの眼差しを向けて来るアニエスに、セイバーはニッコリと笑いかける。

「気のせいです」
「……いや、遠目に見ていても殺気に満ち満ちていたぞ」
「気のせいです」
「どう見て―――」
「キノセイデス」
「…………わかった。確かに気のせいだったような気がするな」

 笑顔のまま同じセリフを繰り返すセイバーの様子に、じっとりとした汗を浮かべながらアニエスは頷く。

「あ〜……そろそろいいか?」
「何だ?」
「こっちも聞きたいことがあるんだが、銃士隊の隊長である君が何故こんなところにいるんだ?」
「貴様を探すためだ」

 士郎の投擲した黒鍵を避けた際、落とした荷物を拾いながらアニエスが士郎の疑問に答える。荷物を拾う手伝いをしようとする士郎だったが、それを視線で断られ所在無さげに立ち尽くしていた。そんな士郎に向けアニエスは、苛立ち混じりの声を上げる。

「陛下から貴様の捜索を頼まれたはいいが、探すのは広大な森の中だ。かなりの時間がかかるだろうし、七万の軍勢に立ち向かったということから、生きている可能性は低く、例え生きていたとしてもかなりの重傷を負っていると考え色々と持ってきたんだが……まさか捜索を開始して三日後に、剣を持った女に追いかけられているところを発見など想像もつかなかったぞ」

 袋の中に散らばった荷物を入れながらぶつぶつと呟くアニエスに、士郎が苦笑いを浮かべる。

「あまりの光景に唖然としている内に追い詰められているわ、斬り殺されそうになっているわ……必死の思いで助けに行こうとすると、当の本人に攻撃をされるわ……散々な目にあった」
「すみません」
「ふんっ、別に気にはしていない」

 深々と頭を下げる士郎に、鼻を鳴らしたアニエスは、袋の中に荷物を全て入れ終えると、士郎が投擲し、巨木を貫きそのまま地面に突き刺さった黒鍵の下に向かって歩き出した。

「これだけ太い木をへし折りながら、まだこれだけの威力があると
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ