第四章、その8の2:迫る脅威
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にユミルは表情を顰めた。羊は単独では怯え竦むものだが群れになると途端に強気になるものだ。そんな群れの中に人間が幾人飛び込んだ所で、群れを操る技量が無い限りそれは無謀な挑戦という文句によって片付けられ、挑戦は失敗に終わるのが関の山だ。盗賊団とユミルら『少数精鋭』の関係とは、つまりそういう事である。
「前言を撤回しよう。まともな作戦とはいえないな」
「はん!貴様と同じように、この小娘も噛み付いてきたぞ。私ならもっとうまく出来るとな!」
「どんな作戦だ?」「森を燃やすというものだ!どこまでも狂っておる!!」
飛んできた言葉を理解するのに幾秒か必要であった。真剣みを帯びたユミルの眼差しは、膝の上に拳を置くキーラを捉えた。
「キーラ、正気か?」
「・・・聞いて下さい。根拠が無い訳では無いのです」「分かっている。だから話すんだ。何事もそれから始まる」
エルフらの男達が舌打ちをするなりして不快感を示す。会議中に幾度も感じたであろう刺々しい眼差しに慣れてしまったのか、キーラは臆する様子も無く咳払いをして、よく通る声で話を切り出した。
「私達が対面している敵は、もともと食糧難に苦しんだり、或は盗賊として身を窶していた者達が大勢を占めています。今日という日を乗り切る、ただそれだけを目的として迎合した集団。目的のためと生え、まともな軍事行動を取れる筈がありません。であるならばその指揮系統も武勇や恫喝頼みの煩雑なものとなっていても、不思議ではありません。ここが敵の弱点であると私は見ています。
・・・私の作戦はこうです」
罅割れた机の上に本を幾つか並べる。小ぶりなものはエルフ側を、大ぶりなものは盗賊を指すのだろう。それらを動かしながら彼女は続けた。
「敵の攻撃を森の入口付近で受け止めて、徐々に後退して敵を奥地まで誘き寄せます。・・・この土地の気候や地理を調べたのですが、秋の終わりから冬の始まりに掛けて、北西から風が吹いてくるらしいのです。白の峰から降りてくる山風は、暦によれば丁度明日から吹き始めます。これを利用するんです!
敵を森の奥地まで誘い出したら、北西方向から一気に火を点けて、敵を火炙りにするんです!事前に発火点周辺の木を切り倒しておけば必要以上に火が広まる事もありません。火はたちまち燃え広がり、賊を一飲みにしてしまうでしょう。これが決まれば、戦況は一気に私達に有利になります!ユミルさん!今更私達が人の和をどうにかする事など出来ません。でも、他の手段を取る事はできるんです!天と地を味方に付ける好機は今しかないんです!」
辺りを憚らない高い声が、氷の如く冷えついた空間を貫いた。エルフ達の剣呑な視線がキーラの強張った横顔へと流れている。逡巡しながらも、ユミルはゆっくりとした口調で告げた。
「・・・キーラ」「
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