第四章、その8の2:迫る脅威
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森の中央にある大きな建物に辿り着くと、衛兵が恭しく踵と鳴らして敬礼をしてくる。ユミルはそれを目礼で返して屋内へと上がり込む。途端に彼の耳に、好意的とは言い難い苛烈な口論が入ってくる。中央奥に座るイル=フードを挟んで、エルフ側の御偉方と、驚いた事に気弱だと思っていたキーラが激しくぶつかり合っていたのだ。
「これしかありません。無茶は承知なのですが・・・」「無茶どころではない!!こんな作戦を立案するなど、貴様も矢張り人間だな!?エルフを侮辱するにも程があるぞ!!」
「ですがあの数の盗賊を一網打尽にするにはこれしかないんです!!小手先の手段を使っても、賊は敵意を増していくだけなんですよ!?」「素人の浅はかな考えを鵜呑みに出来るか!小娘が調子に乗りおって!!貴様が調停団でなければーーー」
「御話の途中、失礼する。何がどうしてこうなっているのでしょうか?」
壮年のエルフの男がユミルを睨み付ける。人間に対する敵意すら感じさせる声色でユミルに言ってのけた。
「聞いていなかったのか!?この人間の小娘が、我々に到底飲めぬ作戦を提案したのだぞ!!」「そうだ!エルフの心を侮辱している!」
「ユミルさん、聞いてください!私の案を通してくれれば、賊を一気に潰せるかもしれないんです!」「黙らんか小娘!」「そうだ!誰の御蔭で貴様が生きていると思ーーー」
バキンと、両者の間に置かれた机に大きな亀裂が入る。静寂が場を支配した。出掛けた言葉を飲み込みながら両者は、机に鉄拳を叩き付けたユミルを恐る恐る見遣った。大きく窪んでしまった机から手を放すと、ユミルは対面に大儀そうに座るイル=フードを見詰める。
「すまない。後で賠償する」
「せんでいい・・・一々謝罪を聞く気にもなれん」
意外にも狼藉には寛容である。ユミルは首を傾げたくなる思いであった。常ならば威勢よく罵声を掛けてくると思っていたのだが、今日の彼はどうも覇気が感じられず、唯の疲れた老人としか見えないのである。
「・・・それで、話はどこまで進んでいるんだ?まさか俺に対してもまともに対応しない心算か?」
エルフの指導者から目を離してユミルがそう言うと、凍り付いていた場の空気が揺らぐのが感じられた。先程まで出していた敵愾心を引っ込めながら、しかし堂々たる口調でエルフは言う。
「迎撃の手段を巡って対立しているのだ。我々が提案した作戦は、敵が攻勢に出る時まで待機して、森の入口に陣を敷いてこれを受け止める。そしてその間に少数精鋭で司令官を討ち、敵の指揮系統を混乱させ、反撃する。こういう流れだ」
「つまりスピード勝負か。聞いた感じ、悪くはなさそうだ。ところで少数精鋭とは誰の事を言っているのだ?」
「貴様ら王国の人間だ。他に誰が居る?」
当然だといわんばかりに繰り出された言動
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