第一章 グレンダン編
道化師は手の中で踊る
別れは唐突に
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で周囲に放浪バスなんていなかったはず」
「まぁ、小手先の技は大の得意でね。詳しくは説明できないよ」
シキは改めて、猫を見る。
そして額にサファイアのような宝石があることに気づく。大きさ的には目と同じくらいの。
「なんのつもりだ? 俺を他の都市に売りさばく気か?」
シキは猫を睨めつけながら、義父の話を思い出す。
都市にとって強い武芸者は必要だ。そのため、他の都市から有力な武芸者の子供をさらう事件があると聞く。大体は捕まるが捕まらなかった場合、取り戻す手段がないので多くの都市が忌み嫌い、見つけた瞬間に死刑にすることを決めている。
この猫もそういうクチなのか、と思ってしまう。
「ふぅ、勘違いしてるようだから言っておく。べつにわたしは、あんたをどうすることもしないよ。というか、これを頼んだのはあんただし」
「はあ?」
ますます、シキは頭が混乱してきた。
今の話からすると、目の前の猫はシキの頼みごとでシキをこの放浪バスに乗り込ませたことになる。
もちろん、シキはこんな額に宝石つけてる猫なんて知らない。
「くそっ! 黒い服の女といい、わけがわからねえ!!」
「黒い服……あぁ、あいつか。まったくまだ諦めてないのか」
「知ってるのか?」
「知ってるとも、あんたが大好きすぎて化け物になったあとも追い続ける狂った女さ。あんた、そういう奴らに好かれるからねえ」
猫の指摘に首を傾げて、疑問に思う。
好き? つまりは友達になりたいってことか? と、だったらなんで直接言わないんだろうとシキは思っていた。
そんなシキの的外れた考えを読んだのか、猫はため息を吐きながら下を向く。
「やれやれ、鈍感は元からか。まぁ、年相応といえば相応か」
「どうでもいい。俺をグレンダンに帰せ」
シキは『両手』で頭を掻き毟りながら、猫に向かっていう。
だが、猫はあくびをしながら否定の言葉を発した。
「無理、あんたは色々しなきゃグレンダンには帰れない。……いや、無理やり帰らせてもらえないと言ったほうが正しいね」
シキはそれを聞いて、うんざりしたような顔になる。
どうせ、グレンダンに徒歩で帰ろうとしても広大な汚染された大地を歩くことは不可能に近い。いや、シキならできるが都市は動き続けるから、これから行くヨルテムの座標データを見ても、無駄だろうと考えた。
「暗い顔はしないでくれ。ただでやれ、なんて鬼畜は言わないさ。ほら、あんたの腕、つけってやったよ」
「そんな……って、本当についてるぅ!?」
シキはいつの間にかくっついている左手を見て、唖然とする。
それを見ながら、猫は嬉しそうに笑う。
「と言っても、錬金鋼だったか? その技術を応用した義手さ。わたしにとっては子供の遊びに等しいけど、改造してて楽しかったよ」
「ぎ、義手?
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