黄巾の章
第21話 「そ、そこまで言ってねぇ!?」
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囲していた約三万の軍は、奇襲による攻撃もあって、その被害は実に一万を越えた。
最も被害が大きかったのが、敵の将軍が逃げるために急襲した、北の義勇軍だった。
愛紗や鈴々の不調。
桃香の捕縛。
盾二と馬正が急行したとはいえ、盾二は桃香を助けるために単身その場を離れた。
馬正も混乱した義勇軍をよくまとめたと思う。
それでも初期の混乱による一方的な被害は、相当なものだった。
その状態からなんとか軍としての行動が維持できたのは、馬正と南の大手門から北門まで奔り抜けた霞がいたおかげだろう。
だが、指揮官が不調だと、軍というものはこうも脆く崩れ去る。
今まで連戦連勝だった義勇兵は、その数を大きく減らしていた。
この軍は勝ちすぎていたのだ。
だから負けることに慣れていない。
それゆえ、逃散した兵も、かなりの数に上っている。
「まいりました……まさか、ここまで被害があるなんて」
被害報告を纏めている朱里が、頭を抱えるように呟く。
正直、あたしもここまでの状況になるとは思わなかった。
「勝ちすぎて負けを知らなかった軍が、ここまで脆いなんて……」
そう呟くのは、朱里と共に被害状況を纏めている雛里だ。
彼女も朱里同様、義勇軍に入ってから、ここまで酷い損害を出したことがなかったと言う。
それだけ盾二という存在が、どれだけの力を示していたかを物語っていた。
「……昔日の強豪が一敗地にまみれて、屍を野辺に晒す。戦いってのはそういうもんさ」
あたしは自嘲気味にそう呟く。
このあたしも……西涼のみんなを失ったときに、そう思ったもんだ。
「……はい」
朱里が、頷きつつ竹簡を置く。
「……盾二様、大丈夫でしょうか」
雛里が、ポツリと呟く。
その心配は、あたしにもある。
あの盾二はともかく……桃香は無事だろうか?
「盾二様だもん。絶対に大丈夫だよ!」
朱里は、努めて明るくそう言う。
きっと内心は不安で一杯だろうに……
そのとき、天幕の入り口が揺れた。
「あ〜……疲れた」
「あ、霞さん。お帰りなさい」
うだる様な霞の声に、朱里が声を上げる。
のろのろと歩いてきた霞に、椅子を勧める。
「結局、徹夜やんか……お肌荒れてまうわ」
「暢気だな、オイ」
椅子に座り込んで呟く霞。
思わずあたしがツッコむ。
「ややこいことが多くて、かなわんねん……とりあえず、周辺の警戒は一番被害が少ない翠の部隊で頼むで」
「わかった。だれかいるか!」
「ここに!」
「あたしの部隊の各隊長たちに集合するよう伝達してくれ。あたしもすぐにいく」
「はっ!」
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