3話
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過ぎれば自転車は海に落ちないだろうし、遅過ぎれば爆発に巻き込まれる。
(まだだ……まだ)
動悸が早くなる。最良のタイミングなんて無い。生きるか死ぬかは、完全に自分の感覚頼みだ。
視界が狭くなる。呼吸も荒い。
これ以上はーーまずい。
キンジは、弾かれるように自転車から飛び出した。
幸いにも、タイミングは完璧だった。
が。焦りのためか、運悪く少し態勢が崩れた。
爪先に、硬いものが掠める。
自転車の、サドルーー!
キンジは空中で、自転車の方に視線をやった。死に際で感覚が加速しているのか、それはやけにゆっくりと見えた。
自転車が傾く。
このままでは、海に落ちる前に倒れて、起爆してしまうだろう。
(あ、俺、死ぬのか)
呆気ない、実に呆気ない散り様だ。
人が死ぬ時は案外あっさりしているというのは聞いていたが、これで彼の生きてきた人生の幕が降りるなんて。
「ちく、しょう……」
今度こそ、キンジは生存を諦めた。あの赤い少女には悪いが、もうどうしようもない。
キンジが意識を手放そうとした、その瞬間。
二発の銃声が、スローモーションの世界に響き渡った。
キンジは目を見開く。
何故、一体誰が。
キンジは銃声のした方に視線をやった。
先程の赤い少女である。
彼女はパラグライダーを器用に操り、その小さな手には大き過ぎる二丁の拳銃を握っていた。二発の銃声はあの銃のものと考えて間違いあるまい。
キンジは射線の先に目をやった。
今にも崩れ落ちそうな、爆弾二発を抱えた自転車。
そしてキンジは、驚くべきものを見る。
バランスを崩し、キンジが飛び降りた左側に倒れそうだった自転車の左ハンドルに、彼女の銃弾がぶち込まれ、なんとバランスを立て直したのだ。
続いての一発はまさにダメ押し。ハンドルのど真ん中を撃って、重心を安定させた。
結果、自転車は止まることなく、海へと飛び出した。
キンジは慌てて受け身を取り、爆風に備えて身を屈めた。
地震のような振動、それに続く盛大な水飛沫。
どうやら目論見は成功したらしい。キンジは尻餅をついて、大きく息を吐いた。
「助かった……のか?」
「そうね。正確には、私に助けてもらったってところかしら」
いつの間にか、パラグライダーを外した例の少女が隣に立っていた。
気に留めていなかったが、彼女が着ているのは東京武偵高指定のセーラー服。見た目的に高校生ではなさそうなので、インターンだろう。
「ああ……そうだな。済まない、助かったよ」
「あら、案外素直ね。まあ、嫌いじゃないけど。そういうの」
くす、と少女は笑った。
年齢とかけ離れた大人っぽい仕草に、キンジの心音が早まった。
言及こそしてなかったものの、この赤い少女はかなり美人だった。
髪色から考えてもハーフなのだろう。もしくはクォーターなのか
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