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愛しのヤクザ
第十六章 逆転
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いた。しかたなく喫茶店に急いだ。店に入ってゆくと、鎌田副支配人が調理長の前で首をうなだれている。相沢を見ると、調理長が声を掛けてきた。
「課長、今、こいつが謝ってきたんだ。内村は許さんと言っているが、俺はもういいと思っている。こうして謝ってきたんだから」
相沢はぜいぜい言いながら答えた。
「ええ、そうして下さい。向井さんもきっとそう言うと思います。それより大変なことになりました。山本はやっぱりあの個室で何かやっていたみたいです。きっと不正です。それを処分しに健康ランドに行きました。どうしましょう?」
「向井さんに電話しろ、それが一番早い。そこで押さえるしかない」
「でもどうやって押さえるんですか」
二人見つめ合い、それぞれ思考を巡らせていたが、最後は首を傾げた。相沢は向井が山本の行く手を遮り、鞄を渡せと怒鳴っている図を思い浮かべたが、そんなこと出来るはずな
どない。それでも、電話だけはしなくてはならない。
 携帯を取り出し、ボタンをプッシュする。携帯に出たのは林田の声だ。息せき切って事情を話すと、林田はしばしの沈黙の後、きっぱりと「何とかします」と答えて電話を切った。相沢は携帯を見詰めて考えた。林田はいやにあっさりと、自信ありげに答えた。何とかすると。じっと見詰める三人に視線を向けた。
「林田君が何とかしますって言っていました。だけど、いったい、何を、どう、何とかするつもりなんだろう」
三人は一様に首を傾げた。

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