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愛しのヤクザ
第十六章 逆転
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 部屋を出ると、桜庭が緊張した面もちで相沢を見ている。どうやら怒鳴り声が聞こえたようだ。鎌田は隅の応接セットに腰掛け、両手で顔を覆っている。相沢はその前に腰掛け話しかけた。
「鎌田さん、これからも山本さんに付いて行くつもりですか。もう、あいつは終わってますよ。総務部長に怒鳴られていました。総務部長は社長の最も信任の厚い人です。この会社を背負ってゆく人と言われてます」
鎌田はしばらくじっとしていたが、両手を顔から離し、相沢を見詰めた。
「山本さんは、村田が見たのに、僕が見たって証言させようとしたんですよ。納得できませんでした。今日は本当に心臓が破裂しそうだったんです。いまさら課長や支配人に顔向けできませんが、本当に申し訳ございませんでした。」
「支配人は寛容な方ですよ。恨みを翌日まで持ち越さないことが施設運営の鍵だって言っ
てました。今みたいに素直に謝れば、許してくれます。僕がそう断言します」
「そう言って頂けると、少しは気持ちが軽くなりました。分かりました、そうします。課長からもお口添え願います」
「ええ、勿論させていただきます。それから、この後、このビルの前にあるブルボンという喫茶店に行って、調理長にも頭を下げてください。それと、今日のことはどうしてばれたんですか?」
「そのことですけど、実は今日、厨房の若い二人がトイレで内村さんのこと話していたそうです。それを個室に入っていたウエイターが聞いて、村田にご注進したんです。山本さんがそのことを常務に連絡すると、すぐ駆けつけてきて、部長と先ほどまで怒鳴合いです」
「何か特別なことは言っていませんでしたか?」
「課長のことを散々に言っていました。あいつは何をしでかすか分かったもんじゃない。だから証拠を隠滅しろって指示していました」
「何ですって、証拠を隠滅するですって?」
「ええ、出来るだけ早く処分しろと言っていました。だから今日山本さんは八王子に出掛けたんです」
 相沢はすぐに思いついた。あの個室だ。あの個室にある何かを処分しようと言うのだ。相沢は山本の後を追うことにした。何としても阻止する。鞄を奪うしかない。そこまで思い詰めた。相沢が廊下を曲がった時、小倉企画部長にばったり会ってしまった。
「相沢君聞いたよ、山田君から。良かったじゃないか、今、専務にお話申し上げてきたところだ。専務が、相沢君を連れてきなさいというので、探していたところだ。ちょうどよかった」
ウワーンと泣きたくなった。しかし、断ると角が立つ。山本が証拠を隠滅しようとしていることを話したとしても、鞄を奪う計画を二人が承認するはずもない。10分やそこらの遅れは高速で飛ばせばなんとかなる。そう思い専務室に同行した。
 しかし、予想外に岡安専務は機嫌が良く、だらだらと話が続き、専務室を出たときは既に40分を過ぎて
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