第十六章 逆転
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のこうのと言ってるとは聞いていたが、こっちはとんと心当たりがない。今日はその証拠をみせてやろうと、内村も連れてきた。外で待たせてある。店は忙しいっていうのに、いったい何を考えているんだ」
「ええ、おっしゃる通りです。まことに申し訳ございません」
「まあ、あんたに謝れなんて言ってないけど」
と言って、相沢にウインクする。山田がしてやったりといった顔で相沢に言う。
「先ほど安藤常務にも電話を入れて事情を話しておきましたが、かんかんに怒っていました。常務も山本さんの話を信じて役員会であんな発言をしわけです。大恥をかかされたことになりますから、山本さんもただでは済まされません」
相沢は山田にお礼を言って、フロアーを後にした。まずは山本をつかまえて話をしたかった。相沢は歩きながら石塚に話しかけた。
「僕は山本をつかまえて言いたいことを言ってやります。そうしなければ気持ちがおさまりませんから。調理長は内村さんのいる喫茶店に先に行って待っていてください。言いたいこと言ったらすぐに行きますから」
「分かった、内村もじりじりして待っているはずだ。行ってあげないと。でも、ちょっとがっかりだな、内村の背中を見せてやりたかったよ。山本が目を剥いて驚く顔がみたかった、残念」
「そうそう、厨房に電話を入れてみてください。みんな僕らに協力して演技してくれていましたが、今日、調理長と内村さんが出掛けて、ほっとして、ついぽろっとしゃべったということも考えられるでしょう。それを誰かに聞かれて、その誰かが山本に電話した」
「うん、あり得る。みんな今日で終わりだと言って喜んでた。俺たちのでかい声の会話に気付かない振りするのも大変だったみたいだ」
「本当、調理長はセリフ棒読みだし」
「馬鹿言え、課長こそ、時々噛んでたくせに」
エレベータが8階に止まった。外に出ると隣のエレベーターの前に安藤常務が立っていた。いつもなら大きな声で話しかけてくるのだが、ちらりと一瞥しただけで全く無視の態度だ。恐らく山本と何かしら打ち合わせをしたのだ。
相沢も挨拶もせず統括事業本部の部屋に向かった。部屋に入ってゆくと秘書の部下の桜庭が立ち上がり、声を掛けてきた。
「あれ、課長、いらしてたんですか。今日は、部長室は千客万来です。今、部長室に鎌田副支配人が入ってます。その前は安藤常務。課長も入りますか?」
「ああ、その予定だ。秘書の内田さんに都合を聞いてくれ」
桜庭はすぐに内線を入れ、しばらくして受話器を置くと言った。
「副支配人が出てきたら、中に入って下さい」
ふと、レストラン事業部の石田京子がこちらを見ているのに気付いた。相沢が視線をむけると、一瞬、はっとして下を向いてしまったが、しばらくしてまた相沢に視線を向けてにっこりと微笑んだ。相沢も微笑み返した。勇気凛々、やったる
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