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愛しのヤクザ
第十五章 悲しき性(さが)
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人間様と一緒で、ムツゴロウさんに必死ですがりついたり、顔を舐めたり、しっぽを振り続けるんだ。見ていて身につまされるほど、やりたい一心の男とそっくりだった」
「そして?」
「ムツゴロウさんは、その犬を行かせてあげたんだ、つまり、抜いてやった。その後、ことを終えたその犬の態度が面白いんだ」
「いったい?」
「人間様と一緒さ。背中を向けて、ムツゴロウさんが少しでも触ろうものなら、うるさそうに邪険にして、逃げ回っていやがった。掌を返すってのは、ああいうことだろうな」
「つまり人間も同じということですか?」
「そういうこと。何発やった後でも、愛おしいと思えれば、それは愛、それほどでもねえと思えば、欲情ってことだ。おい、今日は何発やったんだよ?」
 二人は肩を組んで、押し問答を繰り返している。相沢はぼんやり則子のことを思った。今、自分は則子をどう思っているだろう。やはり、愛おしい。でも、愛とは違うような気がする。

 今日、相沢は則子と会えたことが嬉しかった。帰り際、則子が何故あんな風な態度にでたのか理解に苦しんだが、二人は狂おしいほどに燃えたのは確かなのだ。

「何故、僕の前から消えた?」
「何も言わないで、この一瞬一瞬を大切にしましょう」
喘ぎながらの一言が蘇る。相沢にとって忘れられない一時だったのだ。突然、大きな笑い声が響いた。林田が振り返って怒鳴った。
「課長、こいつ3発しかやってねえのに、やっぱり君子のことは勘違いでしただって。まったく若いのにだらしがねえ。俺だったら5発はやらねえと、本当の愛かどうかなんて、分かんねえけどな。とにかく、君子のことは諦めるそうです。あんな女、ろくでもねえからな」
相沢は素直な気持ちでこれに答えた。
「そうかな、いい子だと思うけど」
「そんなこと言って、まさか、やらしてもらったんじゃねえんでしょうね」
清水が顔を引きつらせ笑いながら言う。
「それが、課長ったら、笑っちゃいますよ。あんなにがんがんやって、俺なんか出る幕ないくらいだったのに、課長、酒飲みすぎてて、やった記憶をなくしちゃっているんだもだから、やったことにならないって、嘆いていいるんですもん、ガッハッハ」
もう辛抱たまらず歩きながら笑い転げている。憮然とした相沢と、呆然とした林田が、互いに顔を見合わせた。目をまん丸にして林田がぼそっと言った。
「今、な、何て言った。課長と清水と君子の3人でやったみたいなこと言わなかったか?俺の聞き違いじゃなければ、そう聞こえたけど」
清水がこともなげに答えた。
「ええ、宿直室で大乱交しちゃいました、3人で」
林田が叫ぶ。
「何てこった!あの女、佐々木ともやってるし、今井とも…、その上…」
動揺して言葉が続かない。ようやく口を開いた。
「課長ー、何でそんないいことやるのに俺を呼んでくれな
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