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愛しのヤクザ
第十四章 再会
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な、課長がそんな所に付き合ってくれるなんて。よし、今日は三人で行きましょう。たまには羽目をはずさねえと、人生の機微にふれることも出来ねえ。そう、商売女との機微、分かりますか?」
「いや、教えてくれ、その機微ってやつを」
「それじゃあ、教えてさしあげます。例えばストリップ。そこに入ったらスケベ心がストリッパーへの思いやりになる。顔が綺麗でも、見惚れて『綺麗だ』なんて呟いちゃいけません。俺の関心はただただあんたの下半身だけという顔をしなければなりません。そのスケベ心をストリッパーが笑う。こうしてストリッパーはお客と五分と五分になれる、わかりますか?」
「まあ、何となく」
「ファッションマッサージでも同じです。私はお金を払うことでしか、女と交渉が持てません、情けない男ですってな顔でお金を払うんです。こういう顔をすると、女も、しょうがねえ、一発でも二発でもやらしてやるか、お金ももらってることだし、って気になるわけです。」
「ほーなるほど、うーん、そういうことか、なるほど」
相沢が何度も頷く。それを横目に林田の舌は滑らかだ。
「君みたいな子が何故こんなことしているの、なんておためごかしのセリフを吐いちゃいけません。だって、相手はそんな人間的な触れあいなんて求めていねえもの」

 その日、三人は一杯引っかけて林田の行きつけの店に繰り出した。相沢は酔って血行が
が良くなっているせいか、どきどきという胸の鼓動を感じながら店の門をくぐった。ひさびさのことで緊張しているのかもしれない。
 待合室でもウイスキーのダブルを注文した。しかし、あの夜のことを思い出した。覚え
ていなければやったことにはならない。運ばれたグラスをちびりちびりとやりながら、林
田がおすすめの源氏名「いすず」の順番を待った。
 待つこと15分、最初に清水がそして林田が消えた。林田は振り返りつつ微笑んだ。その微笑みの真意など気付かず、相沢は照れ笑いを返した。そして相沢だけが残された。胸の鼓動が高まって、下半身がむくむくと起きあがる。

 そしてとうとう相沢の順番がやってきた。案内された部屋に一歩足を踏み入れる。薄いカーテン越しにスタイルの良いシルエットが浮かび上がった時、ほっと安堵のため息を漏らす。かって10センチもあるハイヒールに騙された。足の短い女だった。
 カーテンが開かれ、「どうぞ」という声を聞いた。相沢は気恥ずかしく視線を合わせられず、俯いていた。その視線は、女のそのまっすぐに伸びた脚、黒のふりふりの付いたパンティ、締まったウエスト、ブラジャーからこぼれた乳房、と這うように上っていった。さぞかし、やにさがった顔をしているだろうと自分でも思った。
 目と目があった。お互いあっという声をあげた。女は鵜飼則子だった。






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