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愛しのヤクザ
第十四章 再会
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になく真剣な表情だ。まして言いよどむなど清水らしくもない。
「どうしたんだ?」
「実は……君子のことなんですけど。課長はその後君子と付き合っているんですか?」
「いいや、俺はそっち方面はあまり得意じゃないし、清水と付き合っているって林田から聞いたから、諦めたんだ。もし、やったことを少しでも覚えていたら、もっと積極的に出
られたと思うけど」
 清水はこの言葉を聞いて安心したらしく、下を向いて笑いを堪えている。ようやく笑いが治まるとにやにやしながら言った。
「そうですよねー、覚えていないんじゃ、やったことにはなりませんからねー」
そこへ林田がカラオケ大会の審査を終え戻ってきた。そしてさっそく冗談を飛ばす。
「あれっ、マズイところに出くわしちまったなー。お二人きりでしみじみと愛を語らってたとこだったんでしょう。人の恋路の邪魔する奴は、ってこともあるし、上でもうちょと
向井支配人と話してくるか」
 清水が、がくっと肩を落とし反論する。
「先輩、その冗談、とっくに終わってますよ。お願いしますからもう止めてください。考えただけで気色悪くて背筋がぞくぞくしてきますから」
「分かった、分かった。女ともやってるみてえだから、両刀使いってわけだ。だけど、課長は、愛するお前を裏切らねえと思うからいいけど、あの女はやめにしておいた方がいいぞ。誰とでも寝る女なんて女房にも恋人にも向かねえ」
 清水はこの一言を聞いて一瞬怒りの表情を見せた。しかし、すぐに肩を落とし、頷いた。
「そんなこと言われなくとも分かってます。でも、何つうか、胸が苦しくって、切ないというか…、分かるでしょう?林田さんだって経験あるでしょう?」
「馬鹿野郎、お前の数十倍数百倍経験している。でも、諦めることだって時には必要なんだ。辛くとも諦める。これが男の美学っつうもんだ。それに何が高鳴る心だ。それは心なんてもんじゃねえ。キンタマだ」
「キ、キンタマ?」
「そう、キンタマ。いいか、そこから十発も抜いてみて、それでも心が高鳴るんなら本物だ。そん時は俺も応援してやる。そうだ、今日あたり行ってみっか、ファッションマッサージへ。本番もあり、どうする」
 元気のいい声が響く。
「ごっつぁんっす」
困惑顔で林田が答える。
「そうくるか。最もまだ初月給もらってないからな、それはそれでしょうがねえ。課長、どうです、一緒に、奢りの割り勘で?」
「そう言われても…」とは答えたものの、相沢の心は決まっていた。「是非ご一緒に」だ。
 今日は無性に女を抱きたかった。君子のことでは欲望を発散したというより、逆に貯め込んでいるとしか思えなかったし、久美子のことでも鬱積した思いが心の底に澱んでいた。だから息せき切って答えた。
「でも、今日は暇だし、やることもないから付き合ってもいいよ」
「あれー珍しい
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