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愛しのヤクザ
第十四章 再会
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ふふ、だいぶ自信がありそうだな。分かった、そうしてくれ」

 小倉はどうやら相沢の意図をある程度理解したようだ。小倉が思わず漏らした含み笑いはそのことを物語っていた。以心伝心とはこのことを言うのであろう。
 電話を切ると、相沢は本部の山本に電話を入れた。山本は出張中だったが、シナリオ通
り、伝言を秘書に残した。こう伝言した。「確認しました。内村の背中には何もありませんでした」と。
 山本が内村の入れ墨の件を確かめろと言ったのは、相沢が真実を隠蔽していたことを証
拠立てるためだ。確認し、入れ墨はなかったと伝言したことがその証拠となる。山本はそのメモを相沢の背信行為の証拠として大事に取っておくだろう。

 事務所に戻ると石田が話しかけてきた。
「小倉部長さんが電話かけてくるなんて珍しいわね。何かあったの?」
「ああ、ここに来る前は企画部にいた。以前の仕事についての問い合わせだ」
「あら、そうなの。ねえ、ねえ、それよりこの間、林さんを街で見かけたの。よれよれのジャンパーを着て歩ってた。まだ就職していないみたい」
 石田は林の失業について何の責任も感じていない様子だ。相沢は信じられない思いでため息をつく。
「うちのパパの会社で経理を募集しているんですって、林さんに紹介してあげようかと思って」
 相沢は答えなかった。石田の夫は地場産業の工場で経理の仕事をしているという噂は聞いていた。しかし、不倫関係を知られた男を本気で紹介するだろうか。いや、林がいくら求職で焦っていたとしても、石田に頭を下げるとは思えない。
「少しは悪いことをしたと思っているわけだ」
石田の顔が見る見るうちに朱に染まる。怒りをあらわにして言った。
「何が悪いって言うの、私が何をしたって言うのよ。まるで自分だけが正しいみたいなアンタの態度は頭にくるわ。いつか罰があたるわよ。ふん、今に見てらっしゃい」
 ぷりぷりと尻を振って事務所から出ていった。二階の鎌田副支配人のところへ行くのだ。二階の反支配人グループは確実に勢力を伸ばしている。何故なら施設のトップがそのバックにいるのだから。

 ふと、石田のバックが机の上にあるのに気付いた。事務所には誰もいない。バックの中
にキーホルダーがある。その中に個室の鍵もある。山本が不在の折り、石田が鍵を使って
部屋に入るのを何度か見ている。もしかしたら、机の鍵も持っているのではないか。そんな気がした。あの部屋に何か胡散臭いものを感じていた。
 バッグに手を伸ばそうとしたその時、キーというドアが開く音がしたので、慌てて振り向いた。清水だった。ほっと胸をなで下ろした。
「課長、どうしたんですか、鳩が豆鉄砲食らったみたいな顔をして」
「ああ、ちょっと考え事していたんで、ちょっとびっくりしただけだ。」
「それはそうと…」
いつ
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