第十四章 再会
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するよう指示されました。まだ確認
は取れていませんが、確かめた上で本当のことを報告するつもりです」
「じゃあ、知らなかったんだな、まだ確かめていないのだな?」
「ええ、まだ確かめてはいません」
「それを聞いて安心した。実は専務もそのことを心配していた。常務は厳しい人だから言
ったことは必ず実行する。しかし、ここだけの話だが、もし、知っていたとしても、知らなかったと言い張ればいい」
これを聞いて目頭が熱くなった。
「ご忠告、ありがとうございます。でも、私を信用してください。私は決して人の期待を裏切るような人間ではありません」
ふと、直接の上司を裏切ろうとしていることを思い出し付け加えた。
「まあ、それは人にもよりますが…、ところで一つ聞いてもいいですか?」
「何だ?」
「部長は片桐店長に山本さんの銀行回りの件を確認させましたでしょう?私が部長に話し
たその日にです。つまり、施設の責任者がそこの経理課長と男女の仲であっては不都合だ
とお思いなのでしょう?」
一瞬の沈黙の後、答えた。
「基本的には恋愛は個人の問題だから会社は干渉しない。しかし、もしそうであったとし
たら、間違いを未然に防ぐためにもどちらかを異動させるべきだろうね」
「でも、もし就業時間中にホテルへ連れ出していたとしたら、どうです?」
小倉は即座に答えた。
「そんなことは許されることじゃない。会社に知られれば即刻首が飛ぶ」
「調べましょうか?」
やはり沈黙だ。今度は長い。じっと待った。小倉の口が開いた。
「やめときなさい。そこまでやることはないでしょう」
この言葉を聞いた時、相沢はどこかほっとする自分を意識した。人は時に悪魔的な誘惑に駆られ思い悩む。しかし、そのこと自体で責めを負うことはない。責めを負うのは最後の一線を越えた時のみである。小倉は相沢よりましな人間だということだ。
林田が撮ってきた写真には、ホテルから出てくる車のフロントガラス越しに、紛れもなくあの二人の顔が写っていた。その生々しさに思わず息を飲んだ。人間は浅ましい。しかし、自分のしたことも同様に浅ましいと感じた。小倉も同じ感性を持っていたのだ。
「小倉部長」
「何だ」
「石塚調理長を呼び出すのは誰ですか、それと一人だけですか、つまり内村さんは呼ばないのですか?」
「呼び出しをかけるのは総務部課長の山田君だ。それから内村さんは呼ぶわけにはいかな
い、その意味はわかるね。兎に角、石塚さん一人呼ぶ手はずになっている」
「では、入れ墨を入れていなければ、内村さんが本社に行って問題ないですね」
「勿論だ、入れ墨を入れていないと証明できるわけだしね」
「分かりました。もし、内村さんが入れ墨をしていないと分かったら、私は内村さんと同行いたします」
一瞬の間があった。
「ふ
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