第十一章 乱交
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る。
「ところで、ジャガーの持ち主については仲間に聞いてみたか?」
若者は怒りの顔に、ふと不安を滲ませ、ぷいと横を向いて答えた。
「ああ、聞いたよ…」
「じゃあ俺たちの言ったことが本当だって分かっただろう。だとしたら俺たちに感謝してしかるべきだ。もし、お嬢さんに手をだしていたら、君はこの世に存在しないか、或いは身体のどっかがなくなっていたはずだ」
「何も暴力を振るおうなんて思ってもいなかった。ただ脅してやろうと思っただけだ」
相沢が小首を傾げると。顔を引きつらせながら言った。
「脅すっていったって、ただお話し合いをして、何故僕らが怒っていたか、知ってもらおうと思っただけですよ。いやだなー、ところで、マ、マ、マスターはお嬢さんと、ど、どうゆうご関係なんですか?」
「まあ、お友達ってところかな、もっともあの後、喧嘩してしまったけどね」
「ああ、そうなんですか。ここに、よ、よく来るんで?」
「ああ…」
相沢は言葉を飲んだ。久美子がこっちにやって来るのが見えたからだ。既に帰り支度を整えている。いつ入店したのか気が付かなかった。若者に向かって言った。
「噂をすれば影だ。この店に今から来るつもりらしい」
若者は後ろを振り返り、慌てて顔を伏せた。咄嗟に立ち上がり隠れようとあちこちうろうろしていたが、諦めて相沢に言う。
「あの時のことは謝ろうと思ってます。あっち向いて隅の方でビール飲んでますから、適当な時に声を掛けてください」
ビールと枝豆を持って別の席に移った。
久美子が入り口に佇み笑顔を向けている。相沢もそれに応えた。久美子がゆっくりとした足取りで相沢に近づいて来る。二人はじっと見つめ合った。相沢の胸が苦しくなる。久美子がカウンターに席をとった。やはり愛してしまったようだ、ヤクザから奪ってしまおう、とちらりと思った。久美子が口を開いた。
「生ビールを二つ。相沢さん、よかったら乾杯してくれる?」
「えっ、何に?」
「私の結婚に。日取りが決まったの。全ての手配を終えたわ」
何も答えず、マグカップを二つつかんだ。深い悲しみとかすかな安堵、複雑な思いが相沢の頭を空白にしていた。
「相沢さん、ビール、ビール」
久美子の声に驚いて手元を見ると、ジョッキからビールが溢れている。かなり動揺していたのだ。でも、心を切り替えた。どこかほっとする気持ちがあるのは確かなのだ。ヤクザさんからその婚約者を奪うなど出来っこないのだから。
相沢は無理矢理笑顔をつくると、ジョッキを久美子に手渡した。そして言った。
「おめでとう、心から祝福するよ。本当にお目でとう」
そう言ってジョッキを合わせると微笑んだ。久美子も伏し目がちに笑顔で答えた。
「ずっと迷っていたの。でもあの時、決心したの」
そう言うと、言葉を詰まらせ、目を潤ませた。「あの時」とは
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