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愛しのヤクザ
第十章 悪意
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も覚悟が出来たのだろう。林を応援する。
「林が何度も教えてるの見てきた。それでもやろうとしないから、先日、俺があんたにやるように指示したはずだ。何で嘘を言うんだ」
事の成り行きに一番驚いたのは山本だった。ついさっき石田から聞いた話とちょっと、いや、ちょっとどころか全然違う。石田を振り向いた。石田が叫んだ。
「みんなして話を合わせて、私に責任を押しつけようとしてるのよ、みんな仲間だから。あんな教えたかでは、覚えられないわよ、身体さわったり、すけべなことばっかり言って、肝心なことはちっとも教えてくれなかった」
この言葉を聞いた林の顔が見る見るうちに歪んだ。そして唸った。
「嘘こけ、このアマ、ふざけやがって、ぶっとばしてやる」
完全に切れたのである。唸りは続いている。ぶつぶつと口の中で何かを言いながらも言葉にならず、唸っている。そして立ち上がった。
 林がじろりと山本を睨み付けた。そして一歩、また一歩と近づいてゆく。相沢は林の様子に尋常でないものを感じた。相沢は山本の前に割って入り、林の両肩をつかみ、振り返って石田に叫んだ。
「本当のことを言ってやれよ、石田さん。林が石田さんに懇切丁寧に教えてるのを俺も見ている。身体を触ったり、いつものおふざけなんて微塵も見せなかった。何故なら、林は仕事がきついから、この仕事を石田さんにやって欲しかったからだ」
林田も加わる。
「俺だって見ている。林は朝6時までの勤務なのに、あんたが出てくる9時まで待ってた。その後、何時間も教えてもらってたじゃねえか」

 石田はその場をよろよろと離れ自分の席に戻ると、机に突っ伏してわっと泣き出した。山本本部長は既に自分の言い分に説得力のないことを自覚して一歩退いた。
「まあ、そのことはともかく、間違いは間違いだ。間違ったのだからみんなに謝れと言っただけだ。とにかく、今後は注意してくれ」
と言うと、手に持っていた書類を林の机に置くと個室へと戻っていった。相沢は林を無理やりミーティングスペースへ連れ込み座らせた。そして言った。
「いいか、林、落ち着け。落ち着くんだ。ここで問題を起こせば本も子もなくなるぞ。せっかく、一部上場企業の子会社へ就職できたってあんなに喜んでたじゃないか。兎に角、子供のことを考えろ」
林田も席についた。
「馬鹿なこと考えるな。ここはバックがでけえ会社だ。ここら辺の地場産業じゃ貰えねえぞ、こんな給料。あんな奴のためにそれを棒に振るつもりか?」
林はまだ何かに憑かれたようにぶつぶつと独り言をつぶやいている。おいっと林田が肩を揺すると、はっきりとした声でいった。
「あの野郎、ぶっとばしてやる」
相沢が低い声で言う。
「ぶっとばしたらどうなると思う。あいつは以前、部下にぶっとばされたことがある。その部下はどうなったか分かるか?訴訟を起こされそう
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