第八章 暴走族
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にねじ込む。ほの白く浮かぶ横顔は苦み走っている。ハリウッドのギャングスターみたいだ。相手はたじろいだ。女一人だと思っていたのに、出てきたのは頑丈そうな男二人、まして一人は胡散臭い。
しかし、相沢が強そうだと見込んだとおり、骨のありそうなその男が暴走族の誇りにかけて怒鳴った。
「その女に焼きを入れてやる。俺たちをコケにしやがって、その女を出せ、ふざけやがって。粋がると痛い目にあうぞ、この野郎」
林田が静かに応える。
「お嬢様は車の中でお化粧直ししていなさる。どうやらテメエ等、この辺の族じゃねえな。この辺の奴なら、このモスグリーンのジャガーの持ち主が誰なのか知らねえはずがねえ、謝るのなら今のうちだぞ。謝らねえと後で後悔することになる」
一瞬ひるんだが、その若者が叫ぶ。
「誰だか知らねえが、俺たちだって何のバックもなく族やってる訳じゃねえ。そんなクソ白々しい脅しが効くかよう」
林田の演出に何かわくわくさせるものがあり、ついつい調子に乗って相沢がこれを引き取る。
「笑わせるな。テメエ等みてえなガキを子分にするようなシケタ組なんざ、ヤクザとは言えないんだよ。おい、テメエ等のバックの名前を言ってみろ。えっ、駆け出しの鯨井組か、それとも鎌田組か?言ってみろ」
鯨井と聞いて若者が一瞬たじろいだ。相沢が調子に乗って嵩にかかる。
「そんなケチな組なんざ、こちとら目じゃねえんだよ。テメエ等みたいなジャコに粉をかけるサンシタ奴なんざ、指を詰めさせてやる」
と、小指を手前に曲げ、手の甲を相手に向けて振り回しながら怒鳴った。 かつて鯨井組に囲まれた情景を思い出しながらの迫真の演技である。これは効き目があった。若者が一歩後じさる。はあはあと息も荒く、ことの真偽を量りかねている。
それでも睨み続ける若者に業を煮やし「しょうがねえ」と言いつつ、背中の何かを掴むまねをして、ちらりと林田に目で合図する。林田は一瞬ぽかんとしたが、すぐ了解して相沢の後ろに回した手を押さえる。
「兄貴、そいつはいけません。なんせ、相手はガキですから。ましてお嬢様がいなさるし」
と言うと、若者を睨みすえ、静かに話しかけた。
「お兄ちゃんよ、もう許してやっから、さあ、もう、行け。ちなみにお嬢様とは、吉野組の組長さんの一人娘で、組長さんはそれは大事にお育てになってる。そのお嬢さんの身に何かあったら、それは大変なことになる。分かるな?指を詰めるなんて話じゃなくなっちまう」
若者の顔に今度こそ恐怖の色が浮かぶ。事実なのだから、林田の心にみじんの揺らぎもない。林田が続ける。
「そうそう覚えておけ、八王子ナンバーのモスグリーンのジャガー、この辺の族に知り合いがいたら、聞いておけ、いいな?」
既にブルっている3人の仲間が、威勢のいい若者にそれぞれ震え声を掛ける。「おい、行こ
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