第八章 暴走族
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んなこと言っているんだから。生娘じゃあるまいし、そんな子供じみたこと言うなよ」
「あたしゃ、生娘だよ」
「えっ、今、何て言った、生娘?俺と離れてた大学時代、何やってたの?時代の風潮を感じなかったの?」
久美子が答えようとした時、相沢がもぞもぞと起き上がろうとした。シートベルトに引っ張られ、起き上がれず四苦八苦している。それを見て林田は背中をシートに倒した。久美子は今の会話を聞かれたのではないかと身を固くしていた。
相沢が大きなあくびをしながら口を開いた。
「林田君、俺、どのくらい寝ていたろう?」
「ええと、1時間半くらいかな、ねえ、久美子」
久美子はそれには答えず、運転しながらも相沢の様子を窺っている。
「そうか、1時間半、ようやく眠気がさめてきた。でも、林田君、昨日は、いや、今日か、また危ない所を助けてもらったね。あの場面で、林田君が現れてコーヒーブレイクにもっていかなかったら、あいつらにぼこぼこにされてた。久美子さん、この男は本当に頼りになるんだ。君はいい友達を持ってる」
「ふふ、それ、さっきも聞いたわ。でも、私もそう思っているの。この人、幼友達なんだけど、お兄さんみたいに感じることがあるもの」
「久美子、俺、お兄さんじゃいやだよ。せめて、セックスフレンドにしてくれよ」
相沢は大袈裟に笑って、この訳のわからない二人の関係に立ち入れぬもどかしさをもてあましたが、それでも、うきうきとした気分ではしゃいでいる自分を意識していた。
あたりに潮の匂いが漂い始めた。松林の向こうに海が見えてくると「おお」と男二人が同時にどよめく。そして海岸を左に見ながら疾走する。すでに海の家は閉じられ、サーファー達がうねりの強い波間に漂う姿がみられる。しばらく行くと海岸線は波に洗われる浜づたいの磯が続く。海に見ほれていた二人はいつの間にかイビキをかいて眠りこけている。久美子が目指すのはこの少し先の、いつも一人そこで一時海を眺める、人気のない小さな砂浜だった。
車は国道から離れ、海岸に続く道に入った。松林の前の高台に車を停め、久美子はまたしても眠りこける男どもを置き去りにして、人気のない砂浜を駆けた。ドアを思い切り閉めたのは相沢に目を覚ましてほしかったからだ。その思いは通じた。
相沢はふと目覚めた。窓越しに久美子が遠ざかって行くのが見える。心がざわめく。バックミラーで林田を窺うと往復のイビキをかいて熟睡している。意を決して外に出ると、久美子の残した足跡が海岸まで続いていた。相沢は歩きだした。坂を上りきると、久美子が浜辺に膝を抱えて座っているのが見える。潮風が久美子の前髪をなびかせた。
昨夜の久美子を思い出した。恋愛映画に涙する少女。そう、少女にしか見えなかった。瞳が濡れて、きらきらと光った。タオルケットを口にあてて声を押し殺し
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