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愛しのヤクザ
第八章 暴走族
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 疾走するジャガーも、さして車に興味のない相沢にとっては走る揺り籠以上のものではなく、ひたすら助手席で鼾をかいて眠っていた。親分さんの騒動がおさまったのは午前2時、相沢が眠りについたのは3時、睡眠時間はたった3時間である。
 林田に手を引かれるようにして駐車場へ行くと、久美子は既にアクセルをふかせ、待っていた。当然後ろの席だろうと思いドアに手をかけると、林田が背中を押して助手席をすすめた。久美子との挨拶もそこそこに倒れるように席に着いたのだ。

 久美子はバックミラーで林田の様子を窺う。相沢が寝付く寸前まで、林田は興奮をした様子で昨夜の事件について喋りまくっていた。それが、相沢が鼾をかきはじめた途端、むっつりと黙りこくり小一時間ほど外を眺めたままだ。久美子が問う。
「ねえ、何を考え込んでいるの?いつもの林田君じゃないみたい」
「そんなことねえよ。お喋りな林田君もいれば、物静かな林田君だっているんだ。久美子には見せてねえ、俺の一面だ」
「へー、この20年間一度も見たことのない林田君の一面を今見ているんだ、感激」
「そういうこと。俺はついついお前のこととなると真剣に考え込んじゃう。いっぺんもやらして貰ってもいねえのに、馬鹿みてえだ」
「何いってるのよ、馬鹿言わないで」
「いいか、久美子、言っておくが、この人に期待しても無駄だぞ。この人はエリートだ。ちょっくら間違えて風呂屋になんか紛れ込んできたけど、いつかは元のねぐらに帰ってゆく」
「そんなこと期待なんかしてない」
「いや、期待している。期待してるからこそ誘ったんじゃねえか。でも、この人は駄目だ。そんな高望みすんな。それよっか、俺と結婚しよう」
「林田君は私の親友の旦那さん。結婚できるわけないでしょう」
「離婚だってありえる」
「馬鹿言ってんじゃないの。そんなこと出来るわけないじゃない、子供のこと考えたら。あんなに可愛がっているくせに」
「分かったよ、冗談、冗談。だけど、俺の結婚は、久美子とあいつの策略に引っ掛かっただけだ。あの時、久美子が一緒だったら、あんな間違いは犯さなかった」
「何言ってるのよ。男女を結びつけるのは、縁、そう縁なのよ。それにあの時は、親友の三重ちゃんに頼まれたんだもの」
「俺は久美子が行くって言うから、上司の嫌味をくぐり抜け、有給休暇をとったんだぞ。久美子が行かないと知っていれば絶対行かなかった」
「でも、やっちゃったんじゃない」
「こりゃ、嫁入り前の女が、やったなんてぬかすんじゃねえ。そりゃ、俺も男だ。わいわいがやがやみんなで楽しく酒飲んで、ふと気がつけば三重と二人きり、浴衣姿が艶めかしく、まして、ましてだよ、ぽろんと乳を出されてみな、男なら、誰だって、ついつい吸いついちゃうもんなんだって」
「でも、やらない男だっていると思う」
「久美子は、まだそ
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