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愛しのヤクザ
第七章 テキヤNo2
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には何か持って挨拶に行っているか?」
「ええ、たまには手みやげさげて挨拶には行きますよ。世話になることも多いですから」
これが親分の手だった。怒鳴り声がはじけた。
「何だと、今、何て言った。恥を知れ、この野郎、お前は公務員を酒で買収しているって言ったな?酒ってことはビール券も含まれる。つまり現ナマと一緒だ。それこそ贈賄じゃねえか。そんなことが許されると思っているのか。そんな野郎が、刺青は反社会的だと非難する。公務員を買収するのとどっちが反社会的だと言うんだ、答えろ、答えてみろ。贈賄、収賄が当たり前のように行われ、善良な市民を苦しめる。こんなことが許されていいと思っているのか?」
「???」
 何だ何だ、相沢は頭が混乱してきた。まるでこっちが悪いことをしているような口振りだ。その言葉はほんの少しだけ痛いところ突いている。確かにビール券を持参して挨拶に行っているのだ。そんなこと口に出してはいないが、相手はお見通しなのだ。

 突然もう一人、ヤクザがドアを開けて入ってきた。ぎょっとして見詰める相沢に名乗った。
「マルボウの中村だ。」
 つかさず、親分さんに鋭い視線を投げかけた。
「氏家親分、舎弟から名前は聞いたよ。まあ、そう興奮しなさんな。血圧が上がるぜ。薬、飲んでいるんだろう、血圧を下げる薬」
苦みばしった顔を半分相沢に向け、
「あんた、もう出て行ってもいいよ、俺が話す」
と、顎で指図する。これが警官?相沢はマルボウという言葉を反芻した。暴力団員専門の警察官だ。どっちがヤクザか見まごうばかりなのである。パンチパーマに金のブレスレット、裸にすればたぶんネックレスも、長身の相沢が見上げるばかりの大男、しかも顎には傷痕まである。
「よろしいので…?」
相沢は遠慮がちに言った。早く出て行けと言わんばかりに、またしても顎で指図する。相沢は心のうちでほくそ笑み、深く頭を下げてドアを出た。

 ドアの外から聞き耳をたてる。中村の凄む声が響く。なかなかやる、と思って頼もしく思っていたが、更に凄みのある声が覆いかぶさる。次は何を言っているのか聞き取れない。突然親分さんの怒声がドアを揺るがせた。
「貴様、それでも警官か?貴様は、そうやって有りもしない犯罪をでっち上げ、罪もない人間を陥れていたってことだ。そうやって、無実の人間を何人刑務所にぶっこんだ?えっ言ってみろ、言えってんだ、この野郎。事と次第によっちゃあ、マスコミにぶちまけてやる。声のでかい奴はみんな脅迫罪でぶっこんでやるだって?そんな理不尽があるか?もともと声のでかい俺は、それだけで刑務所にぶち込むってか?」
「バカ野郎、俺はただ、大声で人を脅せば脅迫罪にあたるって言っただけだ」
「いや貴様はその後でこうも付け加えたじゃねえか。俺に逆らえば痛い目にあうってな。ってことは、何の罪もない俺
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