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愛しのヤクザ
第六章 テキヤNo1
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方達は目を何処につけているのですか」

ここで親分さんが切れた。館内じゅうに聞こえるような声を発した。
「舐めんのもいい加減にしろ、この野郎。こう見えてもこの世界じゃ、ちっとは知られた人間だ。お前みたいな若造に舐められてたまるか。」
ロッカー室の入り口に林田が顔をだし、目で警官を呼ぶかどうか聞いている。相沢は首を僅かに左右に振る。そして林田が背後に合図を送る。それを見ていた親分さんが冷ややかに言った。
「そうか、随分威勢がいいと思ったら、警察を呼んでいるな。もう事務所に来ているんだろう、どうりで落ち着いていると思ったぜ」
図星をさされて驚いたが、そんなことおくびにも出さずに、こう言った。
「とにかく、お引取り頂けませんか?会社の決まりです。刺青の方はお断りしておりますので、どうか、ご理解下さい」

 警官がいると相手も理解したことだし、これで騒ぎは納まると思ったのだ。しかし、この分さんに限ってこうした常識は通らなかったのである。親分さんの怒鳴り声が相沢の甘い期待を切り裂いた。
「おい、警官、マッポ、ポリス、出てきやがれ。お前に文句がある。出て来い、隠れていねえで出て来やがれ。こらー聞こえねえのか、出手て来いってんだ」
 突然唸り声を上げていた若者が相沢に殴りかかった。唸り声をあげていたのは演技ではなかったのだ。こいつは本気だと思った。咄嗟に顔を左にかわすとパンチが右の頬を掠めた。
 親分さんは更に声を張り上げた。
「出てきやがれ、今、うちの舎弟が暴力を振るったぞ。いいチャンスじゃねえか、出てきて逮捕しろ。聞こえねえのか?」
 これまで越えたことのない一線を越えたことは確かだった。肌が粟立った。それでも相沢は負けじと親分さんと睨みあう。緊張で胸の鼓動が聞こえてきそうだ。その時、「失礼しまーす」と繰り返しながら林田が子分どもを掻き分け掻き分け親分に近づいてくる。そして言葉をかけたのだ。
「親分さん、あっちでコーヒーを用意しますんで、どうぞ場所を変えて…、いわゆるコーヒーブレイクってやつです。へへへへ…」
 手もみして、にこにこと佇む林田を見て、親分さんも行く気になったようだ。パンツ一丁で凄むのも調子がでないのだろう。「よし、行くか」と言う親分の一言で、みなぞろぞろとロッカーに戻って着替え始めた。相沢が林田に耳打ちする。
「子分はそっちで面倒見てくれ。喫茶店がいい。親分は例の個室に連れてゆく。一緒だとうるさい。それから一番若いのには気をつけたほうがいいぞ。さっき本気で殴りかかってきた。俺が空手3級の腕前じゃなかったら、避け切れなかったろう」
林田は肘で相沢の脇を突っつきながら言った。
「課長、もし課長が黒帯だったら、その冗談…、もっと落ち着いて言えたんじゃねえの」
言われてみて初めて気がついた。喉がからからに渇いて、ほとんど
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