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愛しのヤクザ
第六章 テキヤNo1
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たいでとは?こいつの失礼な行為は実際にあったんだ。みたいではなく、失礼な行為があったことを、と言い直せ」
 随分言葉に神経質な人だとは思ったが、確かにその通りだと思い訂正した。
「分かりました、言い直します。大変失礼を致しまして申し訳ございませんでした。ですが、皆様も入り口の大きな看板を見てご承知とは思いますが、刺青のあるお客様はご入場出来ないことになっておりまして…」
ここで親分さんに話の腰を折られた。
「まてまて、なんでもかんでも一緒くたんにするな。それは別の問題だ。その前に、お前、言ったよな、失礼があったって。俺達、極道の世界じゃ、こういう場合は、きっちりと落とし前をつけなければ納まらない。ヤクザなら小指をばっさりとやれば済む。どうだ、お前もそうすっか?」
「滅相もございません。私はカタギです、ヤクザと同じと言う訳にはまいりません」
「馬鹿野郎、それが甘いって言っているんだ。お前の部下の行為は俺達の神聖な世界に土足で踏み込んだも同然なんだ」
「いえいえ違います。親分さんがたまたまお客さんとして入ってきた。うちの社員が親分さんの刺青を確認しようと目を凝らした。これは社員として当たり前のことです。失礼な態度と親分さんは思ったかもしれませんが、カタギの聖域に土足で入ってきたのは親分さんじゃありませんか?」
「お前は、大きな勘違いをしている。いいか、俺達は料金をきちっと払い、カタギとして入ってきた。カタギの聖域に土足で踏み込んだ訳じゃない。だけど俺達は見た目がカタギじゃない、まさにヤクザだ。そのヤクザと知っていながらこの男は失礼を働いた。つまり土足で俺達の聖域に踏み込んだと言うのはそういう訳だ」
 おいおい、何だ何だ、この屁理屈は。相沢は頭が痛くなった。一瞬ひるんだ隙に、親分さんが決め付けた。
「つまりだ、カタギがヤクザに接する時の不文律、波風を立てないと言う不文律をカタギの方から破った。ってことは責任はお前達にある。従って、今晩は泊めてもらう。それを認めることがお前達の責任の取り方だ」
「冗談じゃありません。さっきも言ったとおり、玄関に二つも大きな看板があった。そこには刺青の方は入場できませんと書いてあったはずです。見なかったとは言わせませんよ」
 相沢のもの言いに取り囲んでいた男達は激昂し、罵声を浴びせながらにじり寄る。例の若者は今にも飛び掛らんばかりの勢いだ。親分さんは皆を見回し、尋ねた。
「おい、そんな看板あったか?」
 皆口々に気がつかなかったなどと白々しく口を揃える。なかには外人よろしく首をすくめ、両掌を上に向け小首を傾げる者までいる。「ヤクザには似合わねえー」と怒鳴ってやりたかった。だいたい縦横1メートルもある看板が目に入らぬはずがない。
「惚けるのもいい加減にして下さい。あれが目に入らないわけないじゃないですか。貴
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