第六章 テキヤNo1
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。そのタオルの下から紛れもなく刺青が露出していた。
声を掛けようにも、二人の男が遮るように立っており、近づくことも出来ない。太った男が振り向いた。かっと目を見開き、またしても怒鳴り声をあげる。
「おい、お前だろう、そこのふんぞり返っている男の陰にいるのは。さっき失礼な態度をとったのは、お前だろう」
相沢は別にふんぞり返っているわけではなく、背中を押されるものだから胸を反らせて押し返しているだけなのだ。男が立ち上がった。のっしのっしと近づいてくる。その大きさに思わず相沢はたじろいだ。相沢も背は大きい方だが、その相沢が見上げるほどの大男なのだ。その大男は二人の男を掻き分け前に出た。そして再び怒鳴った。
「さっきから俺の顔をじろじろと見てやがって、俺に文句でもあるのか?えっ、何とか言え、この野郎。言いたいことがあるんだろう?はっきり言ったらどうなんだ」
上田の「ひー」という声が震えている。それほど迫力のあるドスの効いた怒鳴り声である。これが合図となって散り散りに佇んでいた男達が集まってきた。二人は完全に取り囲まれた。中から二番手らしき男が前にでて、低い声で言った。
「親分が怒っていなさるのも、ちゃんとした理由がある。そいつのせいだ。人をじろじろ見るなんて、だいたい失敬だろう。誰だって決していい気持はしないぜ、そうだろう?」
相沢は首を傾げた。どうも変だ、皆、妙に理屈っぽい。ましてヤクザにしては言葉が丁寧すぎるのだ。親分さんが怒鳴りながら相沢達に詰め寄る。
「俺の何が気に入らないのか知らないが、文句があるんなら、やってもいいんだぞ。やっか?やるんなら、相手になっぞ、えっ、どうなんだ、やんのか、やんねえのか?」
相手はこちらの失礼な態度に抗議していることを強調している。上田にしてみれば、タオルケットで隠した刺青を確認しようと思っただけなのだ。その行為を失礼だとか何とか言って、居直るつもりなのだろう。そうは問屋が卸すかと、相沢も覚悟を決めた。
親分さんは相沢に顔を近づけるだけ近づけ怒鳴り散らし、因縁をつけているのではなく接客態度の悪さに抗議しているのだと強調する。一方その脇で一人の若者が殺気立った顔で唸り声をあげている。その顔はまさに般若の面そっくりだ。二番手らしい男が、そいつを手で制しながら言った。
「こういうのを押さえるのも大変なんだ。血気に逸って何をしでかすか分かったもんじゃねえ。こいつは2年前、酔っ払いを半殺しにして、つい最近出所したばかりだ、おい、我慢しろ、我慢するんだ、バカ野郎、相手は素人だ」
二人の迫真の演技にみとれつつ、いや、そうもしていられないと慌てて相沢は頭を下げた。
「申し訳ございません。失礼があったみたいで、心からお詫びいたします」
と言った途端、親分さんの怒鳴り声だ。
「みたいで、とはなんだ、み
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