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愛しのヤクザ
第三章 鯨井組
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睨んでいたが、ふと苦笑いを洩らした。

 鯨井組長を乗せたパトカーがサイレンと共に去った。他の連中もぞろぞろと外に出てワゴン車に乗り込む。二台のパトカーが待機しており、どうやら事情聴取のため連行されるらしい。ニヒル野郎がワゴンに乗り込む寸前、相沢に向かって叫んだ。
「おい、テメエ、これから毎回毎回、警察を呼ぶのかよ。警察だって他にもっと仕事があるんだぞ。テメエ等の都合ばかり聞くとは限らねえからな。その時はどうするんだ。えっ、どうするんだよ」
 その後、相沢は事情聴取され、当然会議に間に合うはずもない。こうした事情なのだから、本部も許してくれるだろう。事情聴取の合間を縫って電話をいれた。案の定、会議の主催者である小倉企画部長は何度も驚きの声をあげ、根掘り葉掘り聞き、結局、会議欠席を了承した。
 警官からようやく解放されると、ハヤシコンビが近付いて来る。林田が話しかける。
「ご苦労さまでした。本当に大変でしたね」
ねぎらいの言葉にほっと胸を撫で下ろし、よろよろと歩いて、その場で力尽きたという様子で倒れ込む真似をすると、二人は大喜びで、大丈夫ですかなどと声を張り上げ、相沢をくすぐりながら介抱する真似をする。悪ふざけが終わると、安堵と言い知れぬ充足感に満たされ、相沢が、二人に向かって言った。
「助かった、本当に有難う。林田君が傍らにいてくれただけで、どんなに心強かったことか。それに林君の合図で、もうちょっとの辛抱だって分かったしね。でも怖かったなー。あんな怖い思い初めてだよ」
林がそれに応える。
「いやいや、どうして、課長もなかなか堂々としてましたよ。普段の課長からは、想像もできねえけど」
相沢が怒った顔をすると、
「今のは嘘、嘘ですよ。普段でも堂々としているよ、なあ、林田」
と林田に振る。
「ああ、堂々とし過ぎて危なっかしいなーと思うこともあるけどね。ちょっとくらい、可愛げを見せた方が出世すると思うけど。それはそうと、よくコーヒーブレイクなんて言葉が出ましたね、あんな按配なのに」
「いや、膝がガクガクして立ってるのがやっとだったから、とにかく座らないといけないと思って・・・」
林田もこれには笑って、相づちを打つ。
「俺も直立不動のつもりが、膝が笑っちゃて、ふらふらするんだもの、びっくりしたな。あんなこと初めてだ。でも、もうこれっきりにしたいよ、あんなこと」
 相沢は則子がいないのに気付き、林に聞いた。林は、
「ああ、騒動が収まったら、おやすみって言って帰っていったよ、今日も則子は遅番だからな。でも、この喜びを則子と分かち合いたかったですね、課長」
と言って、相沢の顔を探るような目で見る。林は則子のことでは相沢をライバルとみなしている。

 騒ぎも興奮も収まり、則子の言っていたショートカットの女が気になり探してみたが、施設
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