黄巾の章
第20話 「貴方は、悲しみを背負う……ただの『人間(ひと)』なのだから」
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軍の兵士の一人が、馬を操りながらわたしに叫ぶ。
今、わたしは西へ向かおうとした黄巾の部隊を壊滅させて、すぐに東への馬を走らせていた。
「黄巾は壊滅させたとはいえ、半数は散り散りに逃げました。あれを追わなくてよろしいのですか!?」
「そんなのはいいのよ! なんかいやな予感がするのよ!」
「……予感、ですか?」
ああ、もう!
わたしは、反応の鈍い董卓軍の兵士に苛立つ。
うちの兵なら、文句言わずに付き従うわよ!?
「そう! 盾二が……なんかわかんないけど、危ない気がするの!」
「御遣い殿が!? 確かに、お一人でしたし……」
「わかったら、急ぐの! いそげいそげいそげ!」
わたしが、後ろに向かって叫ぶ。
ほんと、いやな予感がするわ。
こんないやな予感は……母様が死んだとき以来かもしれない。
いやよ……初めて本気で好きになった男に、その日のうちに死なれるなんて!
嫌だからね!?
―― 韓忠 side ――
はあ、はあ、はあ……
「く、くるな! くるんじゃねぇ!」
俺は片腕に荷物を持ち、刃を当てながら後退る。
もうすぐだ。
もうすぐ、馬が繋いである場所にたどり着く。
なんとしても……なんとしても、俺は生き延びてやる。
俺は、目の前でゆっくりとこちらに向かってくる魔人に、片腕に捕らえている荷物を見せ付けた。
「この子供がどうなってもいいのか!? ええっ!?」
俺が荷物――子供の首筋に、剣を当てるのを魔人に見せ付ける。
魔人は、一歩、また一歩と近づいてくる。
すでにその後ろには……数百といた俺の兵は、悉く殺されていた。
兵の残りは、恐れをなして逃げ出した。
だが、逃げ出した兵のほとんども、魔人がだした妖術――炎や竜巻でほとんどが殺された。
そして邑人もすでに逃げ去っている。
俺は、このガキを庇っていた兄貴のガキのほうを殺して、こいつを担いだ。
理由は簡単だ。
人質はなるべく小さいほうが、利用価値がある。
「くんじゃねえ……くんじゃねぞ! お前が俺を殺すよりも、こいつの首に刃を食い込ませるほうが早いんだからな!」
俺は、ガキの首に少しだけ刃をめり込ませる。
だが、ガキは少しも動かない。
死んではいない。
だが、目の焦点が合わず、ブツブツと何かを呟いているだけだ。
(もうすぐだ……もうすぐ……いた!)
俺は、繋げていた馬を見つけ、歓喜に胸躍った。
「へ、へへ……お、俺を逃がすなら、この子供は助けてやる……でなければ、すぐにでも殺すぞ」
俺は迫ってくる魔人にそう言いつつ、馬に近づき――手綱を握
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