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ヴァレンタインから一週間
第23話 君の名を呼ぶ
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自身と完全に約束を交わした訳ではないのですが、それでも日の有る内は、有希に付き合うと言う台詞を口にしたのは事実。

 ただ……。
 俺は、目の前の席に着く少女を見つめてから、少し、思考の海に沈む。

 そう。それでも問題は、有希の身体のチェックが今日一日で終わるとは限らない事。
 確かに、彼女に与えられた任務が、本当に監視任務だけならば、妙なギミックのような物は組み込まれてはいないでしょうが、それは有希の自己申告だけで有って、情報統合思念体からの証言では有りませんから。

 ただ、それでも、

「一応、明日は予定が入って居るから難しいかな」

 風に舞う乙女(シルフ)を起動させ、音声結界を解除した後にそう答える俺。
 俺の事を友人だ、と言ってくれたハルヒには非常に申し訳ないけど、先に交わした約束が有る以上、これは仕方が有りません。まして、有希の方が大切な相手なのは間違い有りませんから。

「確かに、故郷に帰るのは木曜日以降に成るけど、俺も、西宮で遊んでばかりは居られないんや」

 もっとも、有希に付き合うのですから、厳密に言うと遊びなのですが。

 本来の俺の仕事は、夜に行って居る結界材を打ち込む事。確かに、人払いの結界を施した上で結界材を打ち込めば問題は少ないのですが、人払いの結界も万能では有りません。矢張り、不特定多数の人間の目の有る内の昼間よりは、夜に成ってからの仕事の方が他人に見られる可能性は少ないはずですから。

 俺の言葉に対して、不満げな雰囲気を発するかと思ったけど、意外に普通の雰囲気で俺と同じように立ち上がるハルヒ。
 これは、俺に付き合って居たのは、単なる暇つぶし程度の気分だったと言う事なのかも知れませんね。

 それとも、ウカツな反応をした瞬間に、俺にツッコミを入れられる事を警戒したのか。

「そう。じゃあ、仕方がないわね」

 俺の下衆の勘繰りに等しい思考の事など考えもしないハルヒは、そう言ってから、出口の方に向かって歩み行く。おそらく、そちらの方に有る鞄などを預けて置くロッカーへと向かっているのでしょう。
 彼女は、自らの文房具を小脇に抱えて居ますから。

 尚、現状は三日目にして、初めて見送る側に立たされたと言う事です。

 じゃあね、と短く、そして、俺の顔を見る事もなく告げて、先に進み行こうとするハルヒ。その姿は颯爽としていて、非常に彼女らしい姿。
 ……って、おい。

「なぁ、ハルヒ」

 そんな、少女の背中に対して声を掛ける俺。
 何故ならば、未だ彼女に伝えていない言葉が有りますから。

 長い髪の毛をふわりと揺らして、俺の方向へと振り返るハルヒ。その瞬間に、この世界を支配している陰鬱なイメージが一瞬だけ払拭された。

「何よ、用が有るのな
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