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ヴァレンタインから一週間
第23話 君の名を呼ぶ
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口にした。
 その瞬間に彼女が発していたのは、明らかに拍子抜けした、と言う雰囲気。
 う〜む。これはもしかすると、何かツッコミを返すべき場面だったと言う事ですか。先ほどの彼女の言葉の後に。
 俺が、妙にマジな答えを返して仕舞ったが故に、彼女の調子も狂ったように感じますね。

 それならば、

「涼宮ハルヒ」

 俺は、彼女が自分の名前を口にするよりも前に、彼女の名前を口にした。それに、何となくですが、自分の口から彼女の名前を呼びたかった。
 ただ、それだけの理由の為に。

 少し、口角に笑みの形が浮かぶのは、ハルヒの方から見ると自慢げに見えるかも知れませんが、俺としては自嘲の印。
 こう言う、考えなしの行動に出る辺りが、メランコリーな気分に陥っている証拠と成るのでしょう。

 そう考えながらも、更に続けて、

「俺は魔法使い。せやから、美人のねえちゃんの名前を知る事ぐらい造作もない事」

 ……と、かなり冗談めかした台詞で告げた。
 もっとも、それは事実。少なくともウソを言った訳では有りません。

 しかし、彼女の反応は……。
 少し驚いたような反応を示した後、冷静な気を発する。
 そして、直ぐに俺をその視線の中心に置いた後、机の上に並べて有った文房具の中から、一枚の見慣れたカードを取り出して指し示した。

 そう。其処には昨日、有希が作った物と同じ……。

「どうせ、あんたの事だから、あたしの貸し出しカードを見た、とか言うオチを用意して有るんでしょう?」

 そして、酷く現実的な答えを返して来るハルヒ。それに、普通に考えて俺が魔法使いだなどと言うぶっちゃけ話よりは、彼女の貸し出しカードや机の上に、意外にも几帳面な雰囲気で整然と並べられて居る文房具に書かれている彼女の名前を見た、と考える方が現実的ですから。
 もっとも、彼女が本を借りるような事が有ったかどうかは判りませんが。

「さあな。この場では、本当の事なんかにあまり意味はないからな」

 今重要なのは彼女が俺の事を友達だと言ってくれた事。それ以外の事は、すべて些末な出来事に過ぎませんから。

 そう考えながら、読んでいた本を閉じ、ゆっくりと……。あまり、物音を立てないように立ち上がる俺。
 そろそろ時刻は、夕方の五時。確かに、後一時間ほど閉館までの時間は有るけど、外は雨。早い内に家に帰る方が良いでしょう。

 俺ではなく、この目の前の少女が。

 しかし、

「ねぇ、明日はどうするの?」

 しかし、立ち上がった俺に対して、これで三日連続と成る問い掛けを行うハルヒ。

「明日か……」

 少し、視線を宙に彷徨わせてから、そう呟く俺。
 これは当然、考える者の雰囲気。ただ、確か明日は……。

 彼女
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