第23話 君の名を呼ぶ
[8/11]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
多分、最初にも言ったように、この頭を押さえ付けられたような感覚をもたらせる、どんよりとした重い雲と、そこから降りしきる細い雨が、俺の気分を因り陰鬱な物に変えている。
ただ、それだけの事だとは思いますが……。
「……それは、仕方がないわね」
まるで、自分にも何か思い当たる部分が有ったのか、先ほどの火柱を噴き上げた直後の活火山のような気配が消えて、その台詞を発した瞬間のハルヒからは、少ししんみりとした雰囲気が流れて来ました。
成るほど。少なくとも、傍らで見て居て飽きない相手で有る事は間違いないでしょう。この涼宮ハルヒと言う名前の少女は。
しかし、そんな事をぼんやりと考えていた俺に対して、実に彼女らしい言葉が叩き付けられた。
もっとも、持ち上げてから落とす。関西人の言葉のキャッチボールでは基本形の組み立てなのですが。
「仕方がないから、あたしが友達になって上げても良いわよ」
少し笑って仕舞うような上から目線の一言。
但し、子分ではなく人間としての同格扱いの友達ですか。その点に関しては、落ち込んでいる雰囲気の俺の事を気遣ってくれた、と言う事なのでしょうか。
それとも、
俺は、俺の正面で、腕を胸の前で組んだ姿勢のまま、俺を睨み付けている少女を改めて見つめ返す。
見た目通りのかなりの美少女。それに、おそらく頭も良い。
何故ならば、この短い付き合いの時間だけで、俺と言う人間の本質をある程度掴んでいる、と言う事でしょうから。
「何よ!」
答えを返そうとしない俺に焦れたのか、そう問い掛けて来るハルヒ。
そう。多分、彼女は有る程度、俺の本質を掴んでいる。
パッと見は無愛想。しかし、話して見ると結構愛想も良く八方美人タイプ。
但し、一歩踏み込むと一歩逃げると言う、自分のテリトリーに他人が侵入して来る事を実は嫌っているタイプの人間。
犬タイプの人間に見えるけど、本質は猫。手を差し出した瞬間に、その手の先からするりと逃げて仕舞う。
「それは楽しいな。たった一人でも友達が出来たのならば、人は変わる事が出来るからな」
少しの空白の後、俺はそう答えた。今回の彼女の言葉は、ハルヒなりに気を使って言ってくれた言葉のはずですから、茶化すのも問題が有ります。
但し、その俺の言葉の後に続く奇妙な空白。
通行人さえ通る事のない図書館の端っこに相応しい静寂と、そして、音も立てず窓ガラスを叩く雨粒の雰囲気のみが周囲を支配した。
そして、
そして、何故か、訝しげな瞳で俺の事を見つめて居たハルヒでしたが、しかし、今回は何のツッコミを入れて来る事もなく、
「それだったら、友達に名前を教えないのは不自然よね」
……と、割と普通の台詞を
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ