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ヴァレンタインから一週間
第23話 君の名を呼ぶ
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ら入ってから、

「それでも、心配してくれたみたいやな。ありがとうな」

 それから、感謝の言葉を伝えて置く。これは、最低限の礼儀と言うヤツ。
 もっとも、この目前の少女はへそ曲がりのクセに……。いや、へそ曲がり故に、ツンデレ気質を持って居るようなので、妙なリアクションをされる前に俺は更に言葉を続けた。

「せやけど、ねえちゃんの言うそれは、確か冬季うつ病とか言う症状の事やな。確かに俺がさっき発した台詞の中には、冬季うつ病を疑わせる部分が入っていたのは間違いないけど」

 もっとも、こんな知識、実生活を営む上では、一切必要とされない類の知識で有る事は間違いない。
 俺も。そして、俺の目の前に陣取る少女の方も、ロクでもない知識の持ち主だと言う事は確認出来たと言う事なのでしょう。
 ただ、そんな事が判ったとしても、大して役に立つ情報と言う訳では有りませんが。

 そして、

「何より、俺は、基本的には冬場の方が、夏の暑い盛りよりもずっと体調が良い人間やからな」

 少し、普段の雰囲気に声と口調を戻した俺が、先ほどの台詞とは百八十度違う内容の台詞を口にする。ただ、これはもしかすると、少し無理をしているような感じをハルヒに与えたかも知れない言葉。
 そうして、更に続けて、

「元々、誕生日は十二月やし、低体温、低血圧。おまけに鉄欠乏性貧血。まさに、病弱で、薄幸の美少女の典型のような俺やから、真夏の容赦ない太陽の下では生きて行く事は難しいんや。あまりにも儚すぎて」

 もう、ツッコミドコロが満載で、オマケに何処からでもツッコミを入れて下さい、と言わんばかりの顔でハルヒを見つめる俺。
 そんな俺をかなり冷たい視線で見つめ返すハルヒ。
 その視線は、昨日のあの冷たい無機質な視線そのもの。そして、

「冬眠が必要な熊かと思ったけど、一応、人語は通じるようね」

 ……と、少し抑揚に欠けた口調で、そう、独り言のように呟いた。
 但し、明らかに、俺に聞こえて居る事が前提のボリュームで。

 ……と言うか、俺が熊? 
 未だかつて、俺は熊と言われた事はないのですが。確かに、精悍な肉食獣と言う雰囲気でもなければ、しなやかな鹿や馬と言う雰囲気でもない。ましてや、愛らしい小動物系でもないとは思いますが、熊って……。

「それで。今日は何か変なんだけど、何か理由があるのなら、さっさと答えなさい」

 動物園の熊の如くその辺りをウロウロするか、しゃけブーメランの特訓でも始めるか、などとクダラナイ事を考え始めた俺に対して、先ほどとは違う上から目線の問いを投げ掛けて来た。
 相変わらずの空気を読まない暴君の雰囲気で。

「理由も何も、今日は偶々、ダウンな気分。いや、メランコリーな気分と言う感じかな」

 先ほどま
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