第23話 君の名を呼ぶ
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抜かれた宝刀を撥ね上げる万結。
しかし、そう、しかし!
完全に跳ね飛ばされ、宙を舞う宝刀を見向きもせずに、その宝刀を跳ね飛ばした事に因り一瞬の空白を作り出した万結の華奢で繊細な左腕を取り――――。
そのまま、巻き込むようにして…………。
このまま、左腕を逆に取ったまま投げ、大地に叩き付けたのなら、彼女の左腕は折れ、そして、その後のトドメを刺す事は容易でしょう。
いくら精霊を纏って居るとは言え、俺の方もそれは同じ。彼女が左腕の防御に精霊を回すのならば、俺の方もこの腕を破壊するのに、全精霊の加護を回しますから。
もっとも、彼女は人工生命体。左腕を失う事ぐらい、本来は問題がないと思います。
つまり、彼女も本気で俺の相手をした訳では無い、と言う事。
戦場となった壺中天の中の疑似空間に、最初と同じ静寂が訪れた。
其処には、俺と、最後の瞬間に俺の生来の能力で大地に軟着陸した万結。
俺と左腕で繋がった万結が、大地に仰向けに横になった状態で、微かに首肯いて見せる。
これは、少なくとも、彼女は俺の実力を認めてくれたと言う事なのでしょう。
「判りました」
一瞬の空白。その静寂の空間に終止符を打ったのは、その場に存在する最後の登場人物。
そして、
「忍くんの申し出に関しての準備は私たちが行います」
その人物、水晶宮長史和田亮は言ってくれました。
これで大丈夫。後は、俺が準備された未来を読み間違えなければ、彼女に問題は無くなります。
但し、その為には……。
「それでは、私は後二回。有希に召喚をして貰えば、彼女に未来を残す事が出来ると言う事なのですね、長史?」
☆★☆★☆
冬に相応しい暗い灰色の氷空。
そう。朝から快晴とは言い難かった氷空は、現在では完全に鉛色の雲に覆われ、そこから降り注ぐ冷たい雨により、世界を万遍なく濡らして居た。
手の中に存在する書籍に視線を移す事もなく、ただ、ぼんやりと左手で頬杖を付いた状態。更に右目のみで窓の外に広がる氷空に視線を送る俺。
そんな俺を、少し……。いや、かなり不機嫌そうな瞳で睨み付ける少女。
そう。普段の彼女と視線の質は同じ。但し、今日は明らかに不機嫌。そう言う類の気を放っているのは間違い有りません。
そうして、
「何か、今日は微妙に変よね」
……と、そう短く問い掛けて来た。
その彼女の現在の雰囲気。不機嫌さを象徴するかのように、普段とは違う。少し、声のトーンを落とした、この静寂に満ちた空間に等しい音量と成って居た。
もっとも、音声結界の内部。更に、彼女の周囲には、機関と言う、ハルヒが起こした情報フレアの際に発現した超能力者集団の監視が付
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