第23話 君の名を呼ぶ
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「それで忍くんは、彼女についてどうする心算ですか?」
それまでと変わらない雰囲気の、水晶宮長史たる和田亮の問い掛け。
そして、この部分が、実は一番問題の有る問い掛けでも有ります。
いや、俺自身の腹は既に決まっているのですが、それを水晶宮に受け入れて貰えるかどうかは判らない、……と言う事です。正直、二十パーセントほどの確率しか、勝算がない申し出を行う心算ですから。
「彼女を失う未来を、今の私に受け入れる事は出来ません」
先ず、そう答える俺。意気込む事もなく、そして、悲観に沈む事もなく。
それまでと変わらない、ややよそ行きの丁寧な物腰で。
そしてこれが、『親殺しのパラドックス』から導き出せる答えでも有りますから。
彼女。長門有希を創り上げた情報統合思念体が、涼宮ハルヒの起こした情報フレアと言う現象の結果誕生した存在ならば、その情報フレア。つまり、三年前の一九九九年七月七日に起きる、異世界からの来訪者のキョンと、この世界の過去の涼宮ハルヒの接触が起きない可能性が高く成りつつある現状では、情報統合思念体自身が発生しなく成る可能性が高くなり、結果として彼女。長門有希と言う名前の対有機生命体接触用人型端末も誕生しない事と成ります。
しかし、それでは、この世界にやって来て以来、彼女と過ごした時間自体が無くなって仕舞う可能性が非常に高く成ります。
当然、最初から今回の事件は起きない事となり、俺が異世界に転移させられた事さえなかった事。記憶から完全に消去されて仕舞うとは思うのですが……。
そんな状況に彼女を陥らせる事が出来る訳は有りません。
「今回の羅?星事件を私が解決する代わりに、彼女の未来を創る手伝いをお願い出来ないでしょうか?」
そう問い掛ける俺。
但し、同時に、この願いが受け入れられる可能性は非常に低いと、考えながら。
何故ならば、彼女の存在を維持し続けると、歴史や世界にダメージを与える可能性が有るから。
彼女。長門有希と言う存在自体がハルヒと、そして、この世界自体に掛けられた呪いから発生した存在で有る以上、彼女を生存させ続けると言う事は、其処に、外なる神のメッセンジャー。この事件の黒幕に対して、更なる策謀の根を残す事と成りかねません。
そうして、本来ならば――――。この世界の本来あるべき姿から言うのなら、長門有希と言う少女は存在しない方が、この世界に取っては本来あるべき姿。
この状況から判断するのなら、この俺の願いなど一笑に付されて当然の申し出です。
たった一人の人工生命体と、全人類の未来。こんな物を両天秤に掛ける事自体がナンセンスですから。
普通に考えたのならば。
次善の策として一番、実現度が高い方法は、有希の|心《魂
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