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万華鏡
第三十話 江田島その四

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「ただ、それでも」
「ブラジルは回られるんですね」
「そうです」
「世界一周ですか、いいですね」
 ここで生徒達は話を聞いてこう言うのだった。
「つまり旅費なし、食費なしで世界一周?」
「しかも船で」
「結構以上にいいよな」
「っていうかお給料も貰ってだから」
「凄い待遇よね」
「滅多にないことよね」
 それが海上自衛隊の海外研修だと、彼等は話すのだった。
 だが自衛官は今はこのことについてはあえて何も言わずにこう言ったのだった。
「それで次ですが」
「あっ、記念館ですよね」
「そこに行くんですよね」
「はい、そうです」
 こう言うのだった、そしてであった。
「そちらにいらして下さい」
「確かそこに東郷平八郎の絵とか回天の資料があるんですよね」
「特攻隊とか兵学校の」
「軍の資料が揃っています」
 実際にそうだというのだ。
「勉強になる場所ですよ」
「森鴎外の書があるのはどうしてですか?」
 年配の先生がこのことを尋ねた。
「前から不思議に思ってたんですけれど」
「あの人も軍に関係ありましたので」
 だからだというのだ。
「それで、です」
「そういえばあの人お医者さんで」
「陸軍軍医総監だったので」
 階級で言えば中将だ、陸軍でもトップにいたのだ。
「あの人の資料もあるんです」
「大和の模型は」
「あります」
 このこともしっかりと話される、そして。
 自衛官は海に向けられている連装の巨大な砲塔を指し示しそれが何かも話した。
「あれは復元ですが」
「戦艦の主砲ですよね」
「それですよね」
「はい、そうです」
 まさにそれだというのだ。
「陸奥の主砲です」
「陸奥っていうのも戦艦ですよね」
「そうです。大戦中の」
 その第二次大戦のだというのだ。
「戦艦でした。事故で沈んでしまいましたが」
「確かあれですよね」
 先程とは別の男子生徒が言って来た。
「あの砲塔が爆発したんですよね、それで沈んだんですよね」
「そうでした」
 残念ながらという口調だった、今の自衛官は。
「事故の原因は色々と言われていますが」
「詳しい原因は」
「色々言われています」
 有力な説ではいじめで精神的に破綻を起こした水兵がやらかした結果というものがある、海軍の暗部である。
「まあそのことは」
「わからないんですか」
「真相は」
「その様です」
 自衛官は真相を知っていた、それで今はこう言って誤魔化すのだった。
「どうやら」
「そうなんですか、不明ですか」
「ことの真相は」
「そうです、それでなのですが」
 自衛官は流れよく話題を変えた、狙ってそうしたのだ。
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