第三十話 江田島その三
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「テストはいつもですから」
「えっ、テストいつもなんですか」
「そんなに多いんですか」
「中間とか期末じゃないんです」
それどころではないというのだ。
「一週間に何回もありますよ」
「一週間に何回もって」
「凄いですね」
「六十点以下で追試です」
しかも追試もあるのだった。
「駄目だと再追試とかですから」
「普通それないですよ、学校でも」
「幾ら何でも」
皆そのことには唖然となる。
「そこまで厳しいって」
「凄いところですね」
「それがここです」
海上自衛隊幹部候補生学校だというのだ。
「何から何まで厳しいです」
「それでここにどれだけいるんですか?」
生徒の一人が真剣に期間のことを問うた。
「何年もとかじゃないですよね」
「私達は一年です」
学生はこう答えた。
「八ヶ月や四ヶ月の過程もあります」
「一年ですか」
「それだけですか」
「そうです、防衛大学や一般大学からそのまま幹部候補生試験を受けて入ればです」
尚この試験の倍率は何十倍でありかなりの難関である。
「一年です」
「それで八ヶ月とかは」
「自衛隊の中で部内の試験を受けてです」
それでなるというのだ。
「八ヶ月が一般で四ヶ月がベテランの方ですね」
「それでそこまで違うんですか」
「そうなるんですね」
「そうです、一年は長い様ですが」
それがだというのだ。
「私は気付けば今です」
「夏ですね」
「数ヶ月ですね」
「あっという間です」
それで終わってしまっているというのだ。
「かなり短いですよ」
「充実してるからですね」
「だからですね」
「はい、そうです」
毎日が厳しいがそれでも充実しているからだというのだ。
「一日なんてあっという間で」
「それで、ですね」
「一年あってもですか」
「すぐだと思います、その一年の次は」
それからはというのだ。
「七ヶ月位の遠洋航海です?」
「遠洋航海?」
「それ何ですか?」
「世界の海を回る航海でして」
無論自衛艦を使ってそうする。
「研修とするものです」
「七ヶ月も使って世界を回ってですか」
「そんな研修ですか」
「それも凄いですね」
「そんなのあるんですね」
「今から計画が立てられています」
これは幹部候補生学校の中ではなく防衛省でそうなっているのだ、そこまで念入りに計画が立てられているのだ。
「私達は中南米にも行きます」
「というとブラジルですよね」
男子生徒の一人がこの国の名前を出した。二年生である。
「シェラスコの」
「あっ、あの牛肉に串を刺して焼いた」
「それの国ですよね」
「シェラスコを食べるかどうかはわかりませんが」
自衛官は微妙な笑顔になってその彼に答えた。
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