第一章 グレンダン編
道化師は手の中で踊る
十年前の亡霊
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ずに吹き飛ばされる。そのまま、シキを殴ったソイツは吹っ飛ばされたシキに追いつき、シキの頭を掴む。
「シキ!!」
アルシェイラが衝剄を放とうとするが、ソイツはシキを盾にしてアルシェイラの攻撃を中断させる。アルシェイラの衝剄では、ソイツごとシキを殺しかねない。
そこで次の一手を打ったのが、ティグリスだった。
「すまんな!!」
そう言って、ティグリスは弓を引いて放った。
ティグリスはシキごとソイツを打ち抜く気だった。相手は高速移動をしていたが、弓の達人であるティグリスには容易い事だった。
放たれた矢は……。
「なにっ!?」
掴まれ、へし折られた。
決してティグリスは手を抜いていない。威力は加減をしたが、そんじょそこらの武芸者では反応できない一撃を放ったはずであった。それをソイツは、片手でそれも矢を見ずに掴み取った。
アルシェイラは呆然と、ソイツを見た。
全身は黒い鎧のような鱗で覆われ、関節部分には筋肉繊維がむき出しになっていた。
「あれは、まさか」
ティグリスは剄で強化した視力で、シキを掴んでいる汚染獣を見て目を見開く。
その汚染獣は、十年前、グレンダンに現れとある武芸者に倒されたはずだったからだ。
「ティグリス、知ってるの!?」
「……十年前の亡霊ですな」
苦虫を潰したような顔でティグリスは呟く。
「メイファー・シュタット事件。あの時の老生体じゃ」
ティグリスの視線の先で、シキを掴んでいた老生体はエアフィルターを抜けて汚染された大地に飛び出した。
ミンスが意識を取り戻したのは、シキが殴られた轟音を聞いてからだった。
まだフラつく頭を抑えながら、立ち上がろうとするが体中に痛みを感じ、起き上がることができなかった。
まず、ミンスが感じたのは、憎しみと恐怖だった。
自分を殴り飛ばし、それを歯牙にかけていない行動とアレが暴走した時の被害と危険性。
まだ自分よりも幼い子供が、そこまでの力を持っている。これは由々しき自体だ、とミンスは思ったのだが。身内にシキよりも凄い人物がいることに気づいていないのは、圧倒的な経験不足と過保護のせいだろう。
そして次に感じたのは、挫折である。
ミンスも一端の武芸者としてのプライドを持っていた。だが、寝ている時に不意打ちして、左腕を切断し、腹部を刺し貫いたにも関わらず拳の速さに追いつけずに吹っ飛ばされたのだ。
さらに明らかに手加減されている。クリーンヒットしたにも関わらず、ミンスの頭蓋骨は痛みを発するだけで砕けていない。
一歩間違えれば殺されていた、そう実感したミンスの心は折れた。
間違いなく死刑、なくてもそれに準じた罰が待っているだろう。
女王に逆らう、権力に逆らうというのはそういうことだ。失敗したら次があるなんてこと
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