第一章 グレンダン編
道化師は手の中で踊る
十年前の亡霊
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とうございます、先生」
レイフォンの脳裏に、終始不機嫌そうな顔をした男が思い浮かぶ。
弟子と認めてくれた師匠、リンテンスの顔だ。
「……お前か」
レイフォンは目の前の巨大な老生体を見る。
形は芋虫のようだが、体は巨大すぎて全体像が見えない。
しかし、レイフォンは臆することもなくその巨体に向かって突っ込んでいく。
相手はレイフォンに見向きもしない。痛みを堪えるかのように身体を左右に揺らすだけだ。
油断はしないが臆しもしない。
「僕は負けられないんだ。リーリンのためにも」
刀を腰だめに構えながら、レイフォンは老生体の身体を蹴ってさらに上空に跳び上がる。
そして勢いよく抜刀すると刀身が赤く染まる。
サイハーデン刀争術、焔切り。
だが、通常の焔切りでは巨大な体を持つ老生体に致命傷を与えることは不可能だ。それはレイフォンもわかっている。
焔切りは巨体には小さすぎたし、何より叩き切ろうとするには刀身が足りなかった。
「そしてぇ!!」
さらにレイフォンは天剣に剄を流し込む。
今までは考えていたが錬金鋼の強度的にできなかった技、そしてシキと考えた対老生体用の焔切り。
刀身の質量が爆発的に上がり、巨大な炎の刃を創り出す。まるでそれは神話に出てくるレーヴァテインと呼ばれた剣のようだった。
焔切りと轟剣の混合剄技。
「シキのためにも!!」
サイハーデン刀争術、轟焔切り。
圧倒的質量と熱量が老生体に直撃し、焔に焼かれ真っ二つにされた老生体は、胃袋の中にいたもう一体の老生体と共に絶命した。
着地して、レイフォンは荒くなった息を落ち着かせる。
もう来ないと思いたいが、不測の事態が起きないとは限らない。むしろ、初陣にしては無茶しすぎだと、レイフォンは思う。
そんなレイフォンの元にデルボネの端子が降り立つ。
『ご苦労様でした。生体反応は消えていますよ』
「……」
デルボネへの恨みはないが、先ほどの件から、ハイそうですか、と信用できるほど、レイフォンは甘い考えはしていない。
薄い防護服の外には、有害な汚染空間があるのだ。警戒はしすぎなほうがちょうどいい。
『あらあら、警戒させてしまいましたか。あぁ、お疲れなところすいません』
「なんですか?」
デルボネはのほほんと次のセリフを言った。
『現在、複数の人型老生体が都市外でシキさんと交戦中です』
「……………………へっ?」
やっと言葉をひねり出したとき、レイフォンの体は勝手に動いて、グレンダンを目指して全力疾走を始めた。
「……ごふっ」
時はレイフォンが老生体の身体から脱出する直前まで戻る。
起き抜けに、一発殴ったシキは口から血を吐いた。
左肩と腹部に激しい痛みを感じ、その場に膝を着く。
「い、いてぇ」
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