第一章 グレンダン編
道化師は手の中で踊る
十年前の亡霊
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まだ立ち上がっていないし、周辺に気配もしない。
嫌な予感がして、錬金鋼の先を見る。すると、ミンスの頬が引き攣った。
「お返しだ」
今まで何をしても起きなかったシキが起きて、ミンス目掛けて拳を振るっていたからだ。だが、ミンスは侮っていた、けが人の一撃と。
だが実際に来たのは、先ほどのアルシェイラよりも重い打撃と訓練でも味わったことがない痛みであった。
そんな容赦ない打撃が突き刺さり、空中に吹き飛ばされる。
そして、今度こそミンスの意識は真っ暗になった。
レイフォンはジッと身体を動かさないようにしていた。
足場にしているのは先程まで戦っていた二対の老生体だが、今は胃液によって溶かされようとしていた。苦痛の声を上げているが、もう半分以上溶けていて虫の息であった。
事前の説明では、汚染獣の胃液にも数時間持つと言われたが、この消化スピードから見て数時間持つとは考えにくかった。
さらに汚染獣の体内だ。こんな場所でスーツが破損でもすれば死しか待っていない。
ならば脱出すればいい、誰でもそうするがレイフォンは何もできない。
内部から切り裂こうと思ったが、斬れないのだ。
正確には斬ってもすぐに再生するため、斬撃主体のレイフォンでは脱出不可能となっていた。
打撃系統の剄技を持っているがシキ並みに操れるとは言えない。
それに多少扱える剄技が合っても、今のレイフォンの技量ではできないと判断したためだった。
「……クソ」
レイフォンは手を握り締める。帰ると約束した。
怪我せずに帰って、リーリンと話をする。そして、シキに謝りに行くのだ。
確かにレイフォンは過ちを犯した。だが、まだ挽回できる程度の過ちだ。
しかし、脱出できないという現実がレイフォンに突き刺さる。
「どうする?」
ほぼ詰みの状態だ。
このままだと、レイフォンは胃液に溶かされ、跡形もなくなるに違いない。
だが、レイフォンは忘れていた。今まで一人で戦い続けていた弊害だろう。
レイフォンには、最強の武芸者であり自分の師が後見人として控えていることを。
スパッと、何かがレイフォンの真正面を通り過ぎた。
直後に、そんな音が何度もレイフォンの耳に聞こえた。なんだろうと思った瞬間、何かがレイフォンの胴体に巻き付く。
そのままレイフォンはナニカに引っ張られた。だが、まだレイフォンは腸の中でありこのままでは腸壁にぶつかる……はずであった。
直後、腸壁が正方形に切られて、外の風景が見えた。
レイフォンは目を見開きながら、剄を天剣に溜め込む。
相手も、トドメはレイフォンに譲るつもりなのか、それともめんどくさくなったのか。空中でレイフォンを離す。
だが、レイフォンは小声で助けてくれたであろう人物に感謝する。
「ありが
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