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神々の黄昏
第一幕その一

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第一幕その一

                舞台祝典劇  ニーベルングの指輪
                   第三夜  神々の黄昏
                 第一幕  ギービヒ家の者達
 暗闇の中でだ。三人の女達がいた。
 一人は白い髪の女でその目は黒い。鋭い顔をしている。
 一人は灰色の髪でその目は青い。穏やかな顔をしている。
 最後の一人は黒い髪でその目は緑である。幼い顔をしている。
 三人は輪になっておりそれぞれの手に糸を持ちそれはつながっている。白い髪の女は赤いドレスを着ており灰色の髪の女は青のドレスだ。黒い髪の女は緑である。三人共同じ髪型で長く伸ばしている。
「ヴェルザンティ」
 白い髪の女が自分と同じ白い糸を持つ灰色の髪の女に声をかけてきた。
「あれは何?」
「どうしたの、ウルズ姉さん」
「あれが見えるの、貴女には」
 ウルズはこうヴェルザンティに問うてきたのである。
「あの光が」
「夜が明けるの?」
「いえ、あれは」
 だがここで黒い髪の女が言ってきた。
「違うわ」
「ではスクルズ」
「あの光は何だというの?」
「ローゲよ」
 スクルズは二人に彼の名前を告げた。
「姉さん達、あれはローゲよ」
「ローゲが」
「輝いているのね」
「そう、ローゲの軍勢が燃えているの」
 こう表現するスクルズだった。
「炎達が」
「そうなの、ローゲが」
「今また」
「まだ夜よ」
 スクルズはまた言ってきた。
「だから糸紡ぎと歌を止めないでおきましょう」
「けれど」
 しかしここでヴェルザンティが言ってきた。
「それは」
「それは?」
「この糸をどうしようかしら」
 こう言うのである。
「この糸を今は」
「私は」
 ここでウルズが言ってきた。
「今は上手くいくかどうかわからないけれど」
「わからないけれど」
「この糸で時の網を作り歌いましょう」
 そうするというのである。
「かつて私達は世界のトネリコの樹に」
「あのユグドラシルに」
「ヴォータンが槍を作ったあの樹に」
「そう、あれに糸をかけて網を作った頃は」
 その頃のことを話すのである。
「木の聖なる枝が大きく幹から出て森の様に緑に茂っていた」
「そう、かつては」
「そうだったわ」
 ヴェルザンティとスクルズもそれで頷く。
「長い間」
「そのままだった」
「冷ややかな木陰には泉が音立てて湧き波は叡智を語りつつ流れていました」
 それも昔のことだった。
「かつては」
「しかし今は」
「変わった」
「そう、変わった」
 そう話していくのだった。
「一人の大胆な神が来て」
「そうして」
「何もかもが変わった」
 話は続く。

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