暁 〜小説投稿サイト〜
IS<インフィニット・ストラトス> ‐Blessed Wings‐ 
第二章 『過去と記憶』 ‐断片‐
第28話 『姉と妹』
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迅速に行われて、そしてあの場で全てを見ていた私達に対しては千冬さんから直接『緘口令』が敷かれた。まあ、当然だろう。

あの直後、<Unknown>を追いかけていって戻ってきた悠はどこか、いや――かなり険しい顔をしていた。
どうかしたのか、と聞いても悠は『ああ、ごめんごめん なんでもないよ篠ノ之さん』と返してくるだけだった。

そして、一夏だ。
一夏はあの直後、織斑先生と山田先生がアリーナへと突入すると、それを見て今まで張っていた気が抜けたのかそのまま安心したように笑って気を失った。

即座に保健室に搬送されて、私も最初はかなり心配したが、取り乱してはいけないと自分に言い聞かせ事態の進展を待った。

保険医の先生から言われたのは『単純な過労、休んでればすぐに目を覚ますよ』と告げられて、私は安心した。

保険医の先生の言うとおり、搬送されてベッドで寝ていた一夏は少ししたら目を覚ました。
言いたい事は沢山あった。

『どうしてあんな無茶をしたのか』
『なんで軽々しく命を捨てるような真似をしたのか』
『どうして――逃げなかったのか』

私自身の一夏に対する勝手な気持ちや憤りともいえる言葉が胸の中で溢れたが、私はそれを自身に一喝して黙らせる。

だが、そんなことを全て一夏に吐き出したら、きっと一夏のあの時の覚悟や決意、モニター越しに見えたあの眼を否定することになる。
それは最低なことだ。私の身勝手で一夏のその覚悟や信念と言ってもいいそれを否定し汚すことだけは、一番したくなかった。

もう私は――あの時の篠ノ之 箒ではないのだ。

いい加減大人になれ、篠ノ之箒。子供じみた自分の身勝手と自分の中だけの理論を一夏に押し付けて、それでどうなる?

何か変わるのか? 変わらないだろう。確かに心配だ、不安だ。そう思うのは当たり前だ。
だけど――そんな私の気持ちなんかより、あの場所、『戦場』に立っていた一夏は、恐怖や恐れ、それを痛いほど味わっていて、死と隣り合わせだったのだ。

そんな状況でも一夏は、戦った。『何かを護る』という信念の元に命を賭けた。
なら私は、そんな――自分が最も好きで、好意を寄せる存在の覚悟と意思を否定なんてしたくなかった。

目を覚ました一夏に対して、私が言った言葉は1つだった。

『一夏、心配したし不安だった――だけど、これだけ聞かせて欲しい。 やり遂げることができたか?』

そんな私の質問に対してベッドの上で上体だけ起こした一夏は、ふっと笑いかけてくれると同時に
『ああ、俺は自分の意志を貫いたよ。それと――心配してくれてありがとう、箒。 後、無茶して悪かった』
とだけ言ってくれた。私は、それで十分だった。

一夏は自分で『もう大丈夫だ』と言って、今は既に部屋へと戻っている。
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