強者と弱者
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もう一人診察しないといけない子がいまして。」
申し出を快く受け入れ、女性はもう一つ布団を敷く。
胡蝶に少女を寝かせるように指示し、従う。
先に双子の素早く診察し、薬箱から適量を取り出し調合し飲ませていく。
最後に少女の方も診察し、さっきと同様薬を飲ませていく。
「これで大丈夫。
薬を飲ませたので安静にしていれば、元気になりますよ。」
「あ、ありがとうございます!」
正座し、おでこを床につけお礼を述べる。
「ですが、これが何度も続けば命の保証ができません。
食事をとり、しっかりと栄養を与えないと。」
無明の言葉を聞いて母親は曇った表情を浮かべる。
「夫は朝から晩まで働いているのですが、それでやっと食べていけるくらいしか稼げません。
子供達に出来るだけ食べさせているのですが・・・」
話を聞いた限り、買える食材は本当に質素なものばかりなのだろう。
こういうのは街を統治している者に言い、流通や値段を調整してもらうのが一般だが。
(この街がそれが機能していない。
しっかりとした職を持っている者なら買えるが、それ以外は・・・)
街に入ってから今まで観察してきた情報を頭の中に整理していく。
今の暮らしの状況を聞いた無明は、薬箱からいくつかの薬を差し出す。
「もしお子さんが倒れたら、これを飲ませてあげて下さい。」
「ですが、お代は・・・」
「気にせずに。
病気にかかる人を助けるのが医者の務めですから。」
無明の言葉を聞いて、母親は目の端に涙を溜め、最後には号泣する。
さすがに無明のこの反応は予想していなかったのか、慌てて母親を慰める。
街の住民が少女に冷たく当たったように、この家族も街の住民に虐げられてきたのだろう。
だから無明の純粋な優しさに感動し、涙を流した。
母親が泣き止み、少女が目を覚ますまでここに置いてもらうようにお願いする。
無明はこれから別の所で診察があり、それが終わり次第少女の親を探すつもりのようだ。
長屋を後にし、無明は胡蝶に話しかける。
「そう言えば名前を聞いてませんでしたね。」
「司馬懿だ。」
「司馬懿さんはこの街の人ではないですね。」
「分かるの?」
「私もそうですから。
この街の人は路地に倒れている子供を助けようとしません。」
馬を回収し、無明の話に耳を傾ける。
「最初はこの街に来た時、賑やかな印象がありましたが裏道に入れば貧しい住民で溢れている。
街の人に聞いた話によると彼らは弱者で、自分達は強者と言ってました。」
「弱肉強食。」
「その通り。
それはこの裏道でも同じです。
自分より弱い弱者から物奪い、盗られた弱者はさらに弱い弱者から奪う。
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