第三十六話 主導権
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して、或いは頷く事で賛成した。ローエングラム公もやむを得ないと思ったのだろう、“分かった”と頷いた。
「球型コンテナがフェザーンから来るはずです。その護衛をどうするかだけ決めておきたいと思います」
頭領の言葉に皆が頷いた。二千万人の一年分の食糧の他、植物工場、兵器工場のプラント、資材等が二百四十の球型コンテナに収められている。重要極まりない補給物資だ。
「六個艦隊を護衛に使うべきかと思いますが如何でしょう」
皆が頭領の言葉に驚いた。ローエングラム公も”六個艦隊か“と口に出している。俺も驚いている、一個艦隊も送れば十分かと思ったが……。
「同盟軍は五個艦隊、六万隻の兵力を所持しています。劣勢にある軍が補給を断とうとするのは戦争の常道です。彼らが全兵力を投入しても守れるだけの戦力を用意するべきかと思います」
なるほど、確かにそうだ。
「なにより補給を断たれれば帝国軍は短期決戦を強いられることになります。それは避けるべきでしょう」
「黒姫の頭領は短期決戦には反対かな」
ビッテンフェルト提督が問いかけた。声が硬い、頭領が短期決戦に反対だと思ったのだろう。だが頭領はそうではないというように首を横に振った。
「同盟軍にそれを強いられるべきではないと言っています。一気に敵の首都を突くか、ゆっくりと攻めるかは我々が決断する事です、敵に決めさせられる事では無い」
「なるほど、主導権か……」
ローエングラム公の言う通りだ。頭領は主導権は我々が握るべきだと言っている。ビッテンフェルト提督も頷いている、納得したのだろう。
「同盟軍の姿が見えない事、目に見える戦果が無い事で不安かもしれませんが焦る事は有りません。不安なのは同盟軍も同じです。何と言っても三倍以上の敵を相手にするのです。容易な事では無い」
「……」
何人かが頷いた。
「我々に今出来る事は同盟軍に隙を見せない事です。まず補給を万全にし長期自給を可能にする。逆にここで補給を失えば帝国軍に隙有りと同盟軍を勢いづかせる事になります。それを防ぐために六個艦隊を動かす……。同盟軍がそれを知れば帝国軍に隙無しと不安を一層募らせるでしょう。作戦会議は補給を万全にしてからで良い」
殆どの人間が頷いている。皆納得したらしい。確かに反乱軍の姿が見えない事で少し焦っていたようだ。地に足を付けて戦えという事か……。思わず苦笑が漏れた。手強いな、黒姫の頭領は相変わらず冷静で強かだ。反乱軍も頭領の強かさには手を焼くだろう……。
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