第三十六話 主導権
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その事が会議を常にも増して混乱させている……。
キルヒアイス、ロイエンタール、ミッターマイヤーの三人も無言だ。本来ならローエングラム公が会議をリードしない以上この三人と総参謀長が会議をリードしなければならない筈だ。しかしリードしようとはしない、時折黒姫の頭領に視線を向けるだけだ。彼らだけでは無い、皆がチラチラと頭領を見ている。先程発言した四人も発言しながら頭領に視線を向けていた。皆が頭領を気にかけている。
しかし黒姫の頭領は討議に参加する様子を見せない。時折小首を傾げたり天を仰いだりする。またはローエングラム公に視線を向けるときも有る。我々の討議を聞いているのかどうか……。前回の作戦会議の時と同じだ。まるで会議に関心を示さず、最後に総参謀長に促されて意見を述べた。誰もが想定しなかった意見だが現実は頭領の想定通りになっている。一体何を考えているのか……、多分俺だけではあるまい、皆が同じ疑問を持っているはずだ。
「黒姫の頭領、頭領はどうお考えですか?」
総参謀長の言葉に皆が頭領に視線を向けたが頭領はそれを気にする様子を見せなかった。そしてローエングラム公に視線を向けながら
「公、御気分が優れないのではありませんか?」
と問いかけた。
皆が愕然としてローエングラム公を見た。公は表情に困惑を浮かべている。
「先程から拝見するにどうも熱でもあるのではないかと思うのですが……」
「ラインハルト様」
頭領とキルヒアイス提督の言葉に公が自らの手を額に当てた。思い当たるフシが有るのか、皆が顔を見合わせた。
「いや、そのようなことは無いと思うが……」
「しかし、頭にカスミが掛かったような感じがするのではありませんか? どうも考えがまとまらない、いや考えるのが億劫かもしれませんが……」
ローエングラム公が困惑している。我々に視線を向けるが戸惑っているような視線だ。
「済まない、黒姫の頭領の言う通りだ。どうもおかしい、考えることが出来ない。卿らに迷惑をかけてしまったようだ」
ローエングラム公が謝罪の言葉を言うと今度は皆が困惑と恐縮を表情に浮かべた。確かにいつもとは違う、常に有る覇気が無い。頭領が先程から気にしていたのはこれだったのか……。
「これだけの大軍を率いるのです、何処かで疲れが溜まったのかもしれません。今日はゆっくりと御休みになる事です」
「頭領の言う通りです、ラインハルト様」
「しかし、今後の方針を決めねばなるまい」
ローエングラム公は何処となく不本意そうだ。或いは病人扱いされる事が嫌なのかもしれない。
「その状態では無理です。それに今すぐ決める必要性も有りません。一旦作戦会議は打ち切りたいと思いますが如何ですか」
前半はローエングラム公に対しての発言だが後半は我々に対する問いかけだった。皆が声に出
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