第三十六話 主導権
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知りたいらしい。あるいはこの艦隊の出番が有るかどうか知りたがっているのか……。
同盟軍は出てこなかった。帝国軍の目論見は外れたわけだが問題はこれからだな。同盟軍の迎撃作戦、その全容はまだ把握できずにいる。大体の人間はエンメルマン同様、首都ハイネセン付近での艦隊決戦を想定しているようだ。こちらを出来るだけ引き摺りこんでから叩く。おそらくは補給を断った後に叩くのだろうと考えている。
「一筋縄ではいきませんからね」
俺が答えると皆が頷いた。少しの間沈黙が有った。皆が俺を見ている。しょうがないな、もう一言か……。
「場合によってはかなり無茶をする事になるかもしれません、覚悟だけはしておきましょう。何時でも出撃できるだけの用意はしておいてください」
皆が顔を見合わせている。そしてメルカッツだけは俺を見ていた。
「前に出るのですか」
作戦参謀のクリンスマン少佐が問いかけてきた、皆の表情が緊張している。
「……まあ、念のためです」
何とも遣り辛い、そう思った時副官のリンザー大尉が躊躇いがちに
「頭領、そろそろブリュンヒルトに行く時間ですが」
と声をかけてきた。ナイスアシスト! いや、ホント助かったわ、どうも遣り辛くていかん……。
帝国暦 490年 2月20日 ガンダルヴァ星系 ウルヴァシー コルネリアス・ルッツ
「ここは一気にハイネセンを突くべきだ。そして反乱軍を撃破する。それが最善の策だ。周辺星域を制圧してからハイネセンへ向かう等迂遠以外の何物でもない!」
声を上げているのはビッテンフェルト提督だ。
「ここまで来た以上、焦るべきではない。反乱軍の狙いはこちらを引き摺りこんで疲労のピークを狙うという事だ。周辺星域を制圧して安全を確保しつつ進むべきだろう。前に進んで後ろで騒がれては堪らぬ」
こちらはワーレン提督だ。この二人、士官学校では同期の筈だがここまでタイプが正反対というのも珍しいだろう。
先程から総旗艦ブリュンヒルトの会議室では今後の方針を巡って会議が開かれている。会議室の空気は決して良くない、本来ならランテマリオで決戦の筈だった。そこで勝てば後は怖れるものなど無かった筈だった。だが反乱軍は出てこなかった。その事が皆を苛立たせている。
「それでは先年の反乱軍と同じになるではないか!」
「あれは帝国軍が焦土作戦を採ったからだ、同一に考えるべきではない」
今度はケンプ、シュタインメッツの二人だ。誰かが溜息を吐いた。先程から同じ主張を繰り返している。何の進展も無い事にウンザリしているのかもしれない。
ローエングラム公は会議が始まってから無言を通している。何時もの公に似合わぬ態度だ。普通なら積極的に会議をリードして結論を出すのだが……、公も迷っているのかもしれない。
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